「ホームページを作ったのに、近隣の飼い主さんが来てくれない」 「遠方からの患者さんは来るのに、近所の方が少ない」
このような悩みを抱えている動物病院経営者は多いのではないでしょうか。実は、動物病院の患者さんの約8割は半径3km以内から来院しています。
本記事では、商圏分析の基本から、地域密着型のWeb戦略まで、近隣の飼い主さんを確実に集めるための実践的な方法を解説します。
動物病院の商圏特性を理解する
商圏とは何か
商圏とは、病院に来院する患者さんが住んでいる地理的範囲のことです。小売店やレストランと同様、動物病院にも明確な商圏が存在します。
動物病院の商圏は狭い
一般的な動物病院の商圏範囲は以下の通りです。
一次商圏(コア商圏)
- 半径1〜2km以内
- 患者さんの50〜60%がこの範囲から来院
- 徒歩や自転車でも通える距離
二次商圏(準商圏)
- 半径2〜3km以内
- 患者さんの30〜40%がこの範囲から来院
- 車で5〜10分程度の距離
三次商圏(周辺商圏)
- 半径3km以上
- 患者さんの10〜20%がこの範囲から来院
- 専門診療や口コミでの来院が中心
人間の医療機関と比較すると、動物病院の商圏は非常に狭いことが分かります。これは、ペットを連れての移動が負担になることが大きな理由です。
都市部と郊外での違い
都市部(東京23区、大阪市など)
- 商圏は半径1〜2km程度とさらに狭い
- 公共交通機関での来院は困難
- 徒歩圏内の飼い主さんが中心
- 競合病院が多く、差別化が重要
郊外・地方都市
- 商圏は半径3〜5kmと広がる
- 車での来院が一般的
- 駐車場の有無が来院の決め手
- 競合が少なく、広域からの来院も期待できる
自院の立地特性を正確に把握することが、効果的なWeb戦略の第一歩です。
自院の商圏を分析する方法
ステップ1:既存患者さんの居住地を可視化する
まず、現在来院している患者さんがどこに住んでいるかを把握します。
データ収集方法
- カルテの住所情報を集計
- 郵便番号または町名単位でまとめる
- 直近1年間のデータを使用
可視化ツール
- Googleマップにピンを立てる
- エクセルで集計し、地図上に落とし込む
- 専門的な商圏分析ツールを使用(有料)
患者さんの居住地を地図上に可視化すると、どの地域からの来院が多いか、どの地域が手薄かが一目で分かります。
ステップ2:商圏内の飼育頭数を調べる
環境省の「全国犬猫飼育実態調査」や自治体の登録データから、商圏内のペット飼育頭数を推計します。
推計方法の例
- 商圏内の世帯数を調査(国勢調査データ)
- ペット飼育率を掛ける(全国平均:犬約10%、猫約10%)
- 潜在的な患者数を算出
具体例
- 商圏内世帯数:10,000世帯
- 犬飼育率:10% → 約1,000頭
- 猫飼育率:10% → 約1,000頭
- 合計:約2,000頭の潜在患者
この数字と自院の患者数を比較することで、市場シェアや成長余地が見えてきます。
ステップ3:競合病院をマッピングする
商圏内の競合動物病院を地図上に配置します。
調査項目
- 病院名・所在地
- 診療科目・専門分野
- 診療時間(夜間・休日対応の有無)
- ホームページの充実度
- 口コミ評価(Googleマップなど)
競合の強み・弱みを分析することで、自院の差別化ポイントが明確になります。
ステップ4:商圏内の人口動態を確認する
チェックポイント
- 人口の増減傾向(新興住宅地か、高齢化地域か)
- 年齢構成(ファミリー層が多いか)
- 世帯構成(単身世帯、ファミリー世帯の比率)
- 新築マンション・戸建ての開発予定
将来的な需要予測にも役立ちます。
商圏内の飼い主さんにリーチするWeb戦略

- ローカルSEO対策の徹底
ローカルSEOとは、地域名を含む検索(例:「渋谷区 動物病院」)で上位表示されるための施策です。
基本施策
タイトルタグに地域名を含める 「〇〇動物病院 | 渋谷区恵比寿の犬・猫の診療」
ページ内に地域情報を盛り込む
- 「渋谷区恵比寿で開業して15年」
- 「恵比寿駅から徒歩5分」
- 「代官山、広尾、中目黒からもアクセス良好」
地域密着コンテンツの作成
- 「渋谷区のペット防災対策」
- 「恵比寿周辺のドッグラン情報」
- 「代官山でペットと楽しめるカフェ」
地域に根ざした情報を発信することで、近隣の飼い主さんに見つけてもらいやすくなります。
- Googleビジネスプロフィールの最適化
Googleビジネスプロフィール(旧Googleマイビジネス)は、ローカル検索で最も重要なツールです。
設定すべき項目
基本情報の完全登録
- 正確な住所・電話番号
- 営業時間(祝日・臨時休診も更新)
- ウェブサイトURL
- 診療科目・サービス内容
写真の充実
- 外観写真(目立つ看板も含む)
- 受付・待合室の様子
- 診察室・検査機器
- 獣医師・スタッフの写真
- 駐車場の有無
最低でも10枚以上の写真を掲載しましょう。
投稿機能の活用
- 診療時間の変更
- 臨時休診のお知らせ
- 季節のキャンペーン情報
- 健康に関するアドバイス
週1回程度の投稿が理想的です。
口コミへの返信
- すべての口コミに丁寧に返信
- ネガティブな口コミにも誠実に対応
- 返信は24時間以内が理想
口コミ評価と口コミ数は、Googleマップでの表示順位に大きく影響します。
- 地域特化型のブログ記事作成
商圏内の飼い主さんをターゲットにした記事を作成します。
効果的なテーマ例
地域名+動物病院+α
- 「渋谷区で夜間診療可能な動物病院の選び方」
- 「恵比寿駅近くの動物病院|アクセスと診療内容を比較」
地域のペットイベント情報
- 「渋谷区で開催されるペットイベント2025」
- 「代々木公園ドッグランの利用ガイド」
地域特有の課題
- 「都心部でのペット飼育の注意点」
- 「マンションでの犬猫飼育ガイド」
季節・地域を掛け合わせる
- 「東京都心部の夏の暑さ対策|熱中症から愛犬を守る方法」
- 「渋谷区の花火大会シーズン|ペットの騒音ストレス対策」
これらの記事は、「地域名+ペット関連キーワード」で検索する近隣の飼い主さんに届きます。
- 構造化データマークアップの実装
構造化データとは、Googleに病院の情報を正確に伝えるためのコードです。
設定すべき項目
- 病院名
- 住所
- 電話番号
- 営業時間
- 診療科目
- 口コミ評価
専門的な知識が必要なため、ホームページ制作会社に依頼するのが確実です。
商圏別のアプローチ戦略
一次商圏(半径1〜2km)への施策
最も重要なエリアです。徹底的にアプローチします。
Web施策
- 超ローカルキーワードでのSEO(町名レベル)
- Googleビジネスプロフィールの徹底管理
- 駅からの道順案内を詳細に記載
オフライン施策との連携
- 近隣マンションへのポスティング
- 地域の掲示板への情報掲載
- 商店街との連携イベント
WebとオフラインをMIXした戦略が効果的です。
二次商圏(半径2〜3km)への施策
「わざわざ来院する理由」を明確に示します。
差別化ポイントの訴求
- 専門診療(皮膚科、歯科、整形外科など)
- 高度医療機器の導入
- 経験豊富な獣医師の在籍
- 夜間・休日診療の対応
アクセスの良さをアピール
- 駐車場完備
- 複数路線からのアクセス方法
- 送迎サービス(実施している場合)
三次商圏(半径3km以上)への施策
専門性や特殊な診療内容を前面に出します。
特化型コンテンツ
- 「犬の椎間板ヘルニア専門治療」
- 「猫の慢性腎不全の統合医療」
- 「エキゾチックアニマル診療」
遠方からでも来院する価値を伝えることが重要です。
モバイル検索への最適化

スマートフォンでの検索が主流
近隣の動物病院を探す飼い主さんの約9割がスマートフォンを使用しています。
モバイル最適化のポイント
表示速度の改善
- 画像の圧縮
- 不要なスクリプトの削除
- キャッシュの活用
Googleの「PageSpeed Insights」で自院のホームページをチェックしましょう。
タップしやすいデザイン
- 電話ボタンを画面上部に固定
- 予約ボタンを大きく配置
- フォームの入力項目を最小限に
クリックトゥコール機能 電話番号をタップするだけで発信できる設定は必須です。
<a href=”tel:03-1234-5678″>03-1234-5678</a>
音声検索への対応
「近くの動物病院」「今から行ける動物病院」といった音声検索が増えています。
対策
- 自然な口語表現を含める
- よくある質問(FAQ)ページの充実
- 診療時間・アクセス情報を分かりやすく
マップ検索での上位表示を狙う
マップ検索の重要性
「地域名+動物病院」で検索すると、通常の検索結果よりも上にGoogleマップが表示されます(ローカルパック)。
このマップエリアに表示されることが、地域集患の最重要ポイントです。
マップ検索の順位決定要因
Googleは以下の要素を総合的に評価します。
関連性
- Googleビジネスプロフィールの情報充実度
- 診療科目の明記
- キーワードとの一致度
距離
- 検索者の現在地からの距離
- 物理的に近い病院が優先される
知名度
- 口コミの数と評価
- ウェブ上での言及数
- 被リンク数
特に口コミは重要で、定期的に良質な口コミを獲得する仕組みづくりが必要です。
口コミを増やす施策
来院時のお願い
- 会計時に口コミのお願いカードを渡す
- QRコードで簡単にアクセスできるようにする
- 無理に良い評価を求めない(規約違反)
メールやLINEでのフォロー
- 来院後のフォローメッセージ
- その際に自然な形で口コミを依頼
院内掲示
- 口コミ投稿方法を分かりやすく掲示
- 「ご意見・ご感想をお寄せください」
ネガティブな口コミへの対応
低評価の口コミは避けられませんが、対応次第で信頼を高めるチャンスにもなります。
良い対応例 「貴重なご意見ありがとうございます。ご不快な思いをさせてしまい申し訳ございません。いただいたご指摘を真摯に受け止め、スタッフ一同で改善に努めてまいります。引き続き地域の皆様に信頼される動物病院を目指してまいります。」
誠実な対応は、他の飼い主さんにも好印象を与えます。
SNSでの地域コミュニティ形成

Instagram・Facebookの活用
地域の飼い主さんとつながるツールとして有効です。
投稿内容の例
- 来院したペットの写真(許可を得て)
- 季節の健康アドバイス
- スタッフ紹介
- 地域のペット関連情報
- 院内イベントのお知らせ
位置情報タグの活用 投稿に位置情報を付けることで、近隣の飼い主さんに発見されやすくなります。
地域ハッシュタグの使用
- #渋谷区ペット
- #恵比寿動物病院
- #代官山犬
- #広尾猫
LINEミニアプリ・公式アカウント
近隣の飼い主さんとの継続的なコミュニケーションツールとして最適です。
活用方法
- 診療予約受付
- 診療時間変更のお知らせ
- ワクチン接種のリマインド
- 健康情報の配信
- クーポン配布
地域密着型の情報発信ができます。
アクセス情報の徹底的な分かりやすさ
来院のハードルを下げる
初めての来院で最も重要なのは「迷わず来られること」です。
ホームページに掲載すべき情報
複数の交通手段を記載
- 電車:最寄り駅と所要時間
- バス:最寄りバス停と路線番号
- 車:最寄りインターチェンジ、主要道路からのルート
- 自転車・徒歩:目印となる建物
駐車場情報の詳細
- 有無
- 台数
- 料金(無料/有料)
- サイズ制限(大型車は入れるか)
- 満車時の近隣コインパーキング情報
写真と地図の併用
- Googleマップの埋め込み
- 建物の外観写真
- 看板の写真
- 駅からの道順(写真付き)
動画での案内も効果的 駅から病院までの道のりを動画で紹介すると、初めての方も安心できます。
効果測定と改善
重要なKPI(重要業績評価指標)
商圏戦略の効果を測定する指標です。
Web関連
- 地域名キーワードでの検索順位
- Googleビジネスプロフィールの表示回数
- ホームページへのアクセス数(地域別)
- 予約・問い合わせ件数
来院関連
- 新規患者数(地域別)
- 商圏別の患者比率
- 口コミ数と平均評価
収益関連
- 地域別の売上
- 新規患者獲得コスト
データ分析ツール
Google Analytics
- 地域別アクセス解析
- 流入経路の分析
Googleサーチコンソール
- 検索キーワードの把握
- 地域名キーワードでの表示回数
Googleビジネスプロフィールのインサイト
- 検索方法(直接検索、間接検索、マップ表示)
- ユーザー行動(ウェブサイトアクセス、電話、経路検索)
PDCAサイクルの実践
Plan(計画) 商圏分析に基づく戦略立案
Do(実行) Web施策の実施
Check(評価) KPIの測定とデータ分析
Action(改善) 課題の抽出と施策の修正
月1回のペースでこのサイクルを回すことで、継続的な改善が可能になります。
他業種との連携戦略

地域の関連事業者とのネットワーク
連携先の例
- ペットショップ
- トリミングサロン
- ペットホテル
- ドッグトレーナー
- ペット保険代理店
- 動物関連の専門学校
連携のメリット
- 相互の顧客紹介
- 共同イベントの開催
- 情報交換
- ホームページでの相互リンク
地域のペット関連事業者と良好な関係を築くことで、商圏内での認知度向上につながります。
地域コミュニティへの参加
参加すべきコミュニティ
- 商工会議所・商店会
- 町内会・自治会
- 地域の防災組織
- 子育て支援グループ
参加のメリット
- 地域での信頼構築
- オフラインでの認知度向上
- 地域情報の入手
- 地域住民とのつながり
オンラインとオフラインの両輪で地域密着を進めることが重要です。
商圏外からの集患も視野に入れる
専門性を高めて広域集患
基本は商圏内の集患ですが、専門診療を強化することで商圏外からの来院も期待できます。
専門性のアピール方法
- 専門資格の取得と明示
- 専門診療のページ作成
- 症例紹介(許可を得て)
- 学会発表・論文執筆の実績
バランスの取れた戦略
理想的な患者構成
- 一次商圏(半径1〜2km):60%
- 二次商圏(半径2〜3km):30%
- 三次商圏(半径3km以上):10%
商圏内の日常診療を基盤にしつつ、専門診療で遠方からも選ばれる病院を目指します。
よくある質問と回答
Q1. 商圏分析は開業前にすべきですか?
はい、開業前の立地選定で最も重要な要素です。既に開業している場合も、商圏分析によって効果的な施策が見えてきます。
Q2. 競合が多いエリアでも勝てますか?
差別化戦略と地域密着の徹底で十分に可能です。大手や老舗に対しても、Web戦略やきめ細やかなサービスで対抗できます。
Q3. 商圏分析にコストはかかりますか?
基本的な分析は無料ツール(Googleマップ、国勢調査データなど)で可能です。より詳細な分析は専門会社に依頼することもできます。
Q4. 郊外の病院は商圏が広いので不利ですか?
必ずしもそうではありません。広い商圏をカバーできる強みがあり、駐車場や設備面で優位に立てる場合もあります。
まとめ
動物病院経営において、商圏内の飼い主さんを確実に集めることが安定経営の基盤です。半径3km以内の潜在患者にしっかりとリーチできるWeb戦略を構築しましょう。
商圏戦略の重要ポイント
- 自院の商圏を正確に把握する
- ローカルSEOを徹底する
- Googleビジネスプロフィールを最適化する
- 地域特化型のコンテンツを作成する
- モバイル検索に完全対応する
- 口コミを継続的に獲得する
- アクセス情報を徹底的に分かりやすくする
- 効果測定と改善を継続する
まずは自院の商圏分析から始めてみましょう。データに基づいた戦略的なWeb施策が、近隣の飼い主さんとの強い信頼関係を築き、安定した集患につながります。
商圏分析やローカルSEO対策にお困りの際は、動物病院専門のホームページ制作・コンサルティングサービスをご活用ください。地域特性を踏まえた実践的な施策で、確実な成果をサポートいたします。
【筆者紹介】 株式会社リバティーフェローシップ(動物病院経営ラボ) 代表:小澤直樹 動物病院・歯科医院専門のホームページ制作・経営コンサルティング会社。全国300以上の医療機関の集患支援実績を持ち、商圏分析から具体的なWeb戦略の実行まで、データに基づいた実践的なサポートを提供しています。
