「最近、ペットが痒そうにしている…」 「皮膚が赤くなっているような…」 「嘔吐や下痢が続いている…」
こうした症状に直面した飼い主様は、「これって食物アレルギー?」と疑問に思いながら、自分では判断できず、対応を先延ばしにしてしまうことが多くあります。
問題は、**食物アレルギーは「症状だけでは診断できない」**ということです。同じ症状でも、食物アレルギーの場合もあれば、アトピー性皮膚炎、感染症、その他の疾患の場合もあります。しかし、「どこか違う」という違和感は感じ取れるのです。
本記事では、飼い主様が「これは医師の診察が必要」と判断できるフローチャートと、症状ごとの対応方法を提供します。結果として、適切なタイミングでの来院促進につながります。
目次
- 食物アレルギーの基本知識
- 食物アレルギーとその他の皮膚疾患の違い
- 初期症状の早期発見チェックリスト
- 症状別の対応フローチャート
- 除去食試験の方法と期間
- 来院すべきタイミングの判断基準
- 動物病院での診断・治療の流れ
- まとめ
1.食物アレルギーとは何か
正常な食物消化:
食べ物 → 小腸で消化 → 栄養吸収 → 排出
食物アレルギー:
特定の食物 → 免疫システムが異常反応
→ 炎症物質(ヒスタミン等)放出
→ 全身症状が発現
食物アレルギーの発症率
一般的な犬・猫:
アレルギー全体の10~15%が食物アレルギー
高リスク犬種:
├─ コッカースパニエル
├─ シーズー
├─ ラブラドールレトリバー
└─ (ただし、全犬種で発症の可能性あり)
猫:
犬より低いが、発症は十分あり得る
食物アレルギーの原因食材

最も多い原因食材(犬):
① 牛肉
② 鶏肉
③ 小麦
④ とうもろこし
⑤ 大豆
最も多い原因食材(猫):
① 魚
② 鶏肉
③ 牛肉
④ 穀類(猫はアレルギーが稀)
【重要】
「自然食」「穀物不使用」でも
アレルギーは発症する可能性があります。
2.食物アレルギーとその他の皮膚疾患の違い
主要な皮膚疾患の比較
| 疾患 | 発症時期 | 季節性 | 痒みの程度 | 皮膚の状態 | 其他症状 |
| 食物アレルギー | 通年 | なし | 中~高 | 赤み、脱毛、かさぶた | 嘔吐・下痢あり |
| アトピー性皮膚炎 | 季節性 | あり(春夏) | 高 | 赤み、苔癬化 | なし |
| ノミアレルギー | 通年 | 夏に多い | 非常に高 | 黒点(ノミ糞)見える | なし |
| 感染症(皮膚糸状菌) | 通年 | なし | 低~中 | 円形脱毛、フケ | なし |
| マラセチア感染 | 通年 | なし | 中 | 脂っぽい、臭い | なし |
この表を飼い主様に提示することで、「どのカテゴリに自分のペットが当てはまるか」を自己診断させることができます。
「食物アレルギーの可能性が高い」兆候
✓ 症状が通年(季節性がない)
✓ 食事変更後に症状が出た
✓ 嘔吐・下痢を伴っている
✓ 顔・耳・足先など
特定部位に症状が集中
✓ ノミが見られない
✓ 抗生物質で改善しない
3.初期症状の早期発見チェックリスト

皮膚症状のチェックリスト
飼い主様が自宅で気づきやすい症状を列記します。
【外見的な変化】
□ 皮膚が赤くなっている
□ 毛が抜けている(特に顔、耳、足)
□ 皮膚がカサカサしている
□ 脂っぽい、べたべたしている
□ 皮膚から臭いが出ている
□ かさぶた、ジクジクした部分がある
【行動的な変化】
□ 頻繁に体を痒がっている
□ 足を舐めている(特に繰り返す)
□ 顔や耳を壁や家具にこすりつけている
□ 夜間に痒がって寝ている
□ 毛を自分で引き抜いている形跡
【この中で2つ以上当てはまれば要注意】
消化器症状のチェックリスト
【嘔吐】
□ 週1回以上の嘔吐がある
□ 特に食後に嘔吐する傾向
□ 嘔吐物に未消化の食べ物が見える
【下痢】
□ 週3日以上の下痢がある
□ 便の形状が不規則
□ 便が粘液性(ヌルヌル)
□ 便に血液が混じることがある
【その他】
□ 腹部の不快感(背を丸める、
腹部を床にこすりつける)
□ ガス、腹鳴が多い
【この中で2つ以上当てはまれば要注意】
4.症状別の対応フローチャート

フローチャート①:皮膚症状がある場合
【皮膚症状あり】
↓
ノミが見える?
├─ YES → ノミアレルギーの可能性
│ ← ノミ予防を開始
│ 1~2週間後改善するか確認
│
└─ NO
↓
ノミ予防はしている?
├─ NO → すぐにノミ予防を開始
│
└─ YES
↓
症状が季節性?
├─ YES(春夏に多い)
│ → アトピー性皮膚炎の可能性が高い
│ 医師の診察を推奨
│
└─ NO(通年)
↓
食事変更直後に症状が出た?
├─ YES → 食物アレルギーの可能性
│ 元のフードに戻す
│ 症状が改善するか1~2週間観察
│
└─ NO
↓
嘔吐・下痢を伴っている?
├─ YES → 食物アレルギーの可能性あり
│ 医師の診察を推奨
│ フード変更を検討する前に診断が重要
│
└─ NO
↓
症状が3週間以上続いている?
├─ YES → 医師の診察が必須
│ 感染症の可能性も考慮
│
└─ NO
↓
1~2週間様子を見ながら観察継続
症状が悪化したら即座に医師に相談
フローチャート②:消化器症状がある場合
【嘔吐・下痢がある】
↓
症状はいつから?
├─ 数日以内(急性)
│ → 食中毒、急性胃腸炎の可能性
│ 通常は数日で改善
│ 改善しない場合は医師に相談
│
└─ 2週間以上(慢性)
↓
食事変更と症状出現の時間的関係?
├─ 新しいフード導入直後に症状
│ → 食物アレルギーか
│ 食物不耐性の可能性
│ 元のフードに戻す
│ 改善するか1~2週間観察
│
└─ 時間的関係なし
↓
症状の頻度は増加傾向?
├─ YES → 医師の診察を推奨
│ 基礎疾患がある可能性
│
└─ NO
↓
皮膚症状も同時にある?
├─ YES → 食物アレルギーの可能性あり
│ 医師の診察を推奨
│
└─ NO
↓
1~2週間様子を見ながら観察
症状が継続または悪化 → 医師に相談
フローチャート③:複合症状がある場合
【皮膚症状 + 消化器症状 + その他症状】
これは食物アレルギーの強い疑いがあります。
次のステップに進んでください:
① 現在のフードを記録
└─ 主原料、添加物などを確認
② 除去食試験の準備
(下記「除去食試験の方法」を参照)
③ 医師に相談(実施前に)
└─ 医師の指導下での除去食が重要
5.除去食試験の方法と期間

除去食試験とは
除去食試験は、食物アレルギーの診断における**「ゴールドスタンダード」**です。
原理:
アレルギーの原因食材を取り除いた食事を与え、
症状が改善するかを観察
最も確実な診断法:
└─ 血液検査より高い信頼性がある
皮膚パッチテストより現実的
除去食試験のステップ
ステップ①:現在の食事を記録(1週間)
記録内容:
□ 与えているドッグフード/キャットフードの名前
□ トッピング(野菜、肉など)
□ おやつ
□ 人間の食べ物
□ サプリメント
理由:
食物アレルギーの原因は複数の食材が
組み合わさっていることもあります
全ての食事内容の把握が重要
ステップ②:除去食フードの選択
除去食フードの条件:
□ 単一のタンパク質源
(例:ラム肉のみ)
□ 新しいタンパク質源
(以前与えたことのない食材)
□ 低脂肪
□ 添加物が少ない
推奨フード例:
– ロイヤルカナン 「ハイドロライズド」
– ヒルズ 「z/d」
– プロプラン 「HypoAllergenic」
ステップ③:除去食への段階的変更
重要:急激な食事変更は避ける
Week 1:
└─ 現在のフード75% + 新フード25%
Week 2:
└─ 現在のフード50% + 新フード50%
Week 3:
└─ 現在のフード25% + 新フード75%
Week 4:
└─ 新フード100%
【この段階が重要】
急激な変更は、
アレルギーではなく「食物不耐性」による
一時的な嘔吐・下痢が起こりやすい
ステップ④:症状の観察(除去食開始後6~8週間)
観察期間:最低6週間
理由:アレルギー症状の改善には
時間がかかる
チェックポイント:
□ 皮膚症状の改善度
□ 痒みの減少
□ 脱毛の停止
□ 嘔吐・下痢の改善
□ 全体的な元気さ
判定基準:
改善が認められた場合:
└─ 食物アレルギーの診断がほぼ確定
その後、段階的に食材を追加し、
原因食材を特定する
(食物負荷試験)
改善が見られない場合:
└─ 食物アレルギーではなく、
アトピー性皮膚炎など
他の疾患の可能性
医師の診察が必須
よくある失敗パターン
× 失敗①:おやつや人間の食べ物を与え続ける
→ 除去食試験が無効になる
└─ 完全に除去することが必須
× 失敗②:複数の新しい食材を同時に試す
→ 原因食材を特定できない
└─ 1つずつ試験することが原則
× 失敗③:3~4週間で判定してしまう
→ 症状改善に時間がかかる
└─ 最低6週間は必要
× 失敗④:医師の指導なく独自に実施
→ 栄養バランスが偏る可能性
└─ 医師の監督下での実施が望ましい
6.来院すべきタイミングの判断基準

「今すぐ来院」が必要な場合
【緊急性が高い】
□ 激しい痒みで皮膚から出血している
□ 重度の脱毛(体の50%以上)
□ 嘔吐が頻繁(1日3回以上)
□ 下痢に血液が混じっている
□ ぐったりしている、元気がない
□ 呼吸困難(極稀だが、アナフィラキシスの可能性)
判定:
この中で1つ以上当てはまれば、
本日中に来院してください
「1~2週間以内に来院」が必要な場合
□ 皮膚症状が1ヶ月以上続いている
□ 嘔吐・下痢が2週間以上続いている
□ 食事変更後に症状が出始めた
□ アンチヒスタミン薬で改善しない
□ 過去にアレルギー診断を受けたことがある
判定:
この中で2つ以上当てはまれば、
1~2週間以内に来院を推奨
「初診予約」でもいい場合
□ 軽度の皮膚症状だけ
□ 嘔吐・下痢の頻度が低い(週1~2回)
□ 症状が1ヶ月以内の比較的新しいもの
□ 健康診断の時に相談したい
判定:
この中で複数当てはまれば、
通常の初診予約で対応可能
7.動物病院での診断・治療の流れ
初診時の検査
【医師が実施する検査】
① 問診
└─ 症状の開始時期、経過、食事内容など
② 一般検査
└─ 視診、触診、皮膚スクレイピング検査
(ダニ感染の除外)
③ 血液検査(オプション)
└─ 全身の健康状態確認
肝臓・腎臓機能の確認
食物アレルギーの血液テスト
(参考程度の信頼性)
④ 皮膚培養検査(感染の有無確認)
診断までの流れ
検査結果
↓
その他の疾患を除外
├─ ノミアレルギー
├─ アトピー性皮膚炎
├─ 感染症
└─ 脂漏症 など
↓
食物アレルギーの可能性が高い
↓
除去食試験の開始
↓
6~8週間の経過観察
↓
症状改善の有無を判定
治療方針の決定
除去食試験で改善した場合:
└─ 診断:確定的食物アレルギー
治療:アレルギー食の継続給与
管理:定期的な食事指導
除去食試験で改善しない場合:
└─ 診断:食物アレルギーではない
次の診断:アトピー性皮膚炎など
治療:別の治療アプローチへ
8.まとめ
飼い主様が理解すべき重要ポイント
【食物アレルギーの診断は難しい】
✗ 症状だけでは診断できない
✗ 血液検査だけでは確定できない
✓ 除去食試験が最も信頼性が高い
✓ 医師の指導下での実施が重要
適切な来院判断
自己診断フローチャートにより、
飼い主様が「医師の診察が必要」か
「様子を見てもいい」かを判断できるようになります
結果として:
├─ 不要な来院が減少(飼い主様の時間・費用削減)
└─ 必要な来院は早期に実施(適切な診療機会の増加)
飼い主様へのメッセージ
「皮膚症状や消化器症状が続く場合、
『食物アレルギーかもしれない』という疑問は
極めて妥当です。
しかし、同じような症状は
複数の疾患で起こります。
本記事のフローチャートと症状チェックリストを活用して、
『今、医師の診察が必要か』を判断してください。
また、除去食試験を開始する際は、
必ず医師に相談してください。
適切な診断と治療により、
ペットの快適な生活が実現するのです。」
動物病院の機会
このようなチェックリストとフローチャートを
提供することで、動物病院は:
- 飼い主様が判断しやすくなり、
適切なタイミングでの来院促進
- 医師の初診時間をより効率的に活用
(飼い主様が既に自己評価を済ませている)
- 信頼関係の構築
「この病院は飼い主の判断を尊重してくれる」
という評価につながる
本記事を参考に
動物病院経営ラボでは、食物アレルギーに関する、
- 飼い主様向け「症状判定チェックリスト」ダウンロード資料制作
- 「フローチャート」のポスター・リーフレット設計
- ホームページの「食物アレルギー診断ナビ」ページ制作
- SNS・LINEでの除去食試験アドバイス配信
- 初診時用の「食事記録シート」作成
などのサポートを提供いたします。
「飼い主様の自己診断を促進したい」 「不適切な来院を減らしたい」 「食物アレルギーの診断精度を上げたい」
このようなご相談は、ぜひお気軽にお寄せください。
飼い主様の適切な判断と行動を促し、 動物病院の診療効率化と信頼構築を同時に実現する、 戦略的なコンテンツ制作・情報発信サポートを、 全力でさせていただきます。
