「口コミを増やしたいけど、なかなか書いてもらえない」「患者満足度を高めたいが、何を改善すればいいか分からない」
飼い主さんからの生の声は、動物病院にとって最も価値のある情報です。しかし、多くの病院がアンケートを取るだけで終わり、その声を集患や改善に活かせていません。
患者アンケートは、正しく設計・実施・活用することで、信頼性の向上、サービス改善、そして効果的なマーケティングツールになります。
本記事では、飼い主アンケートを戦略的に活用し、病院の信頼性を高めながら集患にもつなげる方法を解説します。
目次
- なぜ飼い主アンケートが信頼性向上に効果的なのか
- アンケート設計の5つの基本原則
- 回答率を高める依頼方法とタイミング
- 紙・Web・タブレット|最適な実施方法の選び方
- ホームページで患者の声を効果的に見せる方法
- ネガティブフィードバックへの対応術
- アンケート結果を改善につなげるPDCAサイクル
- NPS(推奨度)を測定して集患力を可視化する
- 実際の活用事例と成果
- まとめ
1.なぜ飼い主アンケートが信頼性向上に効果的なのか

第三者の声は最強の信頼材料
病院が自ら「当院は素晴らしいです」と言っても、説得力は限定的です。しかし、実際の患者さんが「ここは本当に良い病院でした」と言えば、その信頼性は何倍にも高まります。
消費者の約8割が、購入前に口コミやレビューを確認すると言われています。動物病院選びも同様で、飼い主さんは他の患者の評価を重視します。
改善点が明確になる
アンケートを通じて、飼い主さんが何に満足し、何に不満を感じているかが具体的に分かります。待ち時間が長い、説明が分かりにくい、料金が不透明、といった課題が浮き彫りになります。
これらの声に真摯に向き合い、改善することで、サービスの質が向上し、患者満足度が高まります。
スタッフのモチベーション向上
「丁寧な説明で安心できました」「スタッフの皆さんが優しかった」といったポジティブなフィードバックは、スタッフのモチベーションを大きく高めます。
自分たちの仕事が評価されていることを実感できれば、さらに良いサービスを提供しようという意欲が湧きます。
マーケティング素材として活用できる
患者の声は、ホームページ、パンフレット、院内掲示、SNSなど、あらゆる場面で活用できる貴重なマーケティング素材です。
「患者満足度95%」「リピート率90%以上」といった数値データも、アンケートから得られます。
2.アンケート設計の5つの基本原則

効果的なアンケートを作るには、設計段階での工夫が重要です。
原則1:質問数は10問以内に抑える
質問が多すぎると、回答者が途中で面倒になり、離脱率が上がります。本当に知りたいことだけに絞り、10問以内に収めましょう。
理想的には5〜7問程度です。短時間で答えられることが、回答率を高める鍵です。
原則2:選択式と自由記述を組み合わせる
すべて選択式だと楽ですが、深い洞察は得られません。逆にすべて自由記述だと、回答者の負担が大きくなります。
選択式の質問を中心に、最後に「その他、ご意見・ご感想があればお聞かせください」という自由記述欄を1つ設ける形がバランスが良いです。
原則3:5段階評価を活用する
「非常に満足」「満足」「普通」「やや不満」「不満」といった5段階評価は、定量的な分析がしやすく、おすすめです。
「満足」「不満」の2択では、中間的な評価ができず、正確な満足度が測れません。
原則4:具体的な項目に分けて質問する
「当院のサービスに満足していますか?」という漠然とした質問では、改善点が見えません。
「受付の対応」「待ち時間」「獣医師の説明」「料金の明瞭さ」「施設の清潔さ」といった具体的な項目ごとに評価してもらうことで、どこを改善すべきかが明確になります。
原則5:個人情報は最小限に
氏名や住所を聞くと、回答率が下がります。匿名で答えられることを明示し、個人情報は必要最小限にとどめましょう。
「年代」「性別」「ペットの種類」程度の属性情報があれば、十分に分析できます。
3.回答率を高める依頼方法とタイミング
アンケートを作っても、回答してもらえなければ意味がありません。回答率を高める工夫が必要です。
最適なタイミング

診察直後、会計を待っている間が最も回答率が高いタイミングです。診療への満足度や印象がまだ鮮明なうちに答えてもらえます。
受付で「お会計までの間に、簡単なアンケートにご協力いただけますか?」と声をかけ、タブレットや紙のアンケートを渡します。
後日メールで送る方法もありますが、回答率は下がります。診察当日にその場で回答してもらう方が効果的です。
依頼の仕方
「アンケートにご協力ください」だけでなく、目的を伝えることで協力を得やすくなります。
「より良いサービスを提供するため、ご意見をお聞かせください」「皆様の声をもとに、改善に取り組んでいます」といったメッセージを添えます。
所要時間も明示しましょう。「2〜3分で終わります」と伝えることで、心理的なハードルが下がります。
インセンティブの活用
アンケート回答者に小さな特典を提供することで、回答率が上がります。
「アンケートにお答えいただいた方に、次回使える500円割引券をプレゼント」「ペット用おやつをプレゼント」といった形です。
ただし、過度な特典は本音の回答を阻害する恐れがあるため、適度な範囲にとどめます。
スタッフの声かけが重要
機械的に「アンケートです」と渡すより、「〇〇ちゃん、今日はお利口さんでしたね。よろしければアンケートにご協力いただけますか?」と、温かく声をかけることで、協力してもらいやすくなります。
スタッフ全員がアンケートの重要性を理解し、積極的に依頼することが大切です。
4.紙・Web・タブレット|最適な実施方法の選び方
アンケートの実施方法には、それぞれメリット・デメリットがあります。
紙のアンケート
メリットとして、年齢を問わず誰でも答えやすい、その場で回答してもらいやすい、インターネット環境が不要といった点があります。
デメリットは、集計に手間がかかる、データ化が必要、保管場所を取る、環境負荷があるといった点です。
高齢の飼い主さんが多い病院や、デジタルツールに不慣れな層が中心の場合は、紙のアンケートが適しています。
Webアンケート(GoogleフォームやSurveyMonkeyなど)
メリットは、集計が自動で楽、グラフ化も簡単、回答データがすぐに分析できる、環境に優しいといった点です。
デメリットとして、その場での回答率が低い、メールやQRコードでの誘導が必要、高齢者には難しい場合があるといった点があります。
若年層が中心の病院や、メール・LINEでの連絡が普及している病院に適しています。
タブレットアンケート
メリットは、紙とWebの良いとこ取りで、その場で回答してもらえる、集計は自動、直感的に操作できる、といった点です。
デメリットは、タブレット端末の購入が必要(2〜5万円)、充電やメンテナンスが必要といった点です。
待合室にタブレットを数台置いておき、「こちらでアンケートにご協力ください」と案内する形が効率的です。
ハイブリッド方式
紙とWebの両方を用意し、患者さんに選んでもらう方法もあります。
「紙でもスマホでもお好きな方でどうぞ」と選択肢を提示することで、回答率が最大化されます。
5.ホームページで患者の声を効果的に見せる方法

集めたアンケート結果は、戦略的にホームページに掲載しましょう。
数値データで訴求する
「患者満足度95%」「リピート率90%以上」「5段階評価で平均4.5」といった数値は、一目で信頼性を示せます。
トップページのファーストビューや、診療案内ページに大きく表示することで、インパクトを与えられます。
具体的なコメントを引用する
「先生の説明が丁寧で分かりやすかった」「スタッフの皆さんが優しくて安心できた」「夜間診療があって助かった」といった具体的なコメントは、リアルな声として響きます。
5〜10件程度のコメントを厳選して掲載しましょう。ただし、飼い主さんの許可を必ず得ること、個人を特定できる情報は削除することが重要です。
ペット種・年代別に分類する
「犬の飼い主さんの声」「猫の飼い主さんの声」「シニアペットの飼い主さんの声」といった形で分類すると、読者は自分に近い立場の意見を見つけやすくなります。
ビフォーアフターと組み合わせる
症例紹介と患者の声を組み合わせることで、説得力が倍増します。
「治療前は歩けなかったのに、手術後2週間で走れるようになりました。本当に感謝しています」といった声と、実際の治療経過を一緒に掲載します。
定期的に更新する
「2020年のアンケート結果」と古い情報のままでは、信頼性が下がります。最低でも年1回は新しいアンケート結果に更新しましょう。
「2024年患者満足度調査結果」と年度を明記することで、鮮度をアピールできます。
6.ネガティブフィードバックへの対応術
アンケートには、必ずネガティブな意見も含まれます。これを恐れず、むしろ改善の機会と捉えましょう。
すべてのネガティブ意見に目を通す
「待ち時間が長い」「説明が早口で分かりにくかった」「料金が高いと感じた」といった意見は、痛いところを突かれますが、これこそが改善のヒントです。
複数の人が同じ不満を述べていれば、それは確実に改善すべき課題です。
迅速に改善策を実施する
ネガティブ意見を受けて、すぐに改善に取り組むことが重要です。
「待ち時間が長い」という声が多ければ、予約システムの導入、診療枠の見直し、待ち時間の目安表示などを検討します。
「説明が分かりにくい」という声があれば、スタッフ研修で説明の仕方を改善します。
改善したことを告知する
「皆様のご意見を受けて、〇〇を改善しました」とホームページや院内掲示で伝えることで、「患者の声を大切にする病院」という印象を与えられます。
「待ち時間短縮のため、オンライン予約システムを導入しました」といった形で、具体的な改善策を示します。
直接フォローアップする
特に深刻なクレームや不満があった場合、可能であれば直接連絡を取り、謝罪と改善策を伝えることも検討します。
真摯な対応が、逆に強固な信頼関係を築くきっかけになることもあります。
7.アンケート結果を改善につなげるPDCAサイクル
アンケートを取ることが目的ではなく、改善につなげることが真の目的です。
Plan(計画):アンケートの設計
何を知りたいのか、どの項目を改善したいのかを明確にして、質問項目を設計します。
Do(実行):アンケートの実施
計画に基づいて、実際にアンケートを実施します。目標として、月間来院患者の30%以上から回答を得ることを目指します。
Check(評価):結果の分析
集まったデータを集計し、満足度の平均点、項目別の評価、ネガティブ意見の傾向などを分析します。
特に評価の低い項目、複数の人が指摘している課題を洗い出します。
Action(改善):施策の実施
分析結果に基づいて、具体的な改善策を実施します。
「受付の対応」の評価が低ければ、スタッフ研修を実施。「待ち時間」が課題なら、予約システムや診療フローを見直す、といった形です。
このサイクルを継続する
3ヶ月〜半年ごとにアンケートを実施し、改善の効果を測定します。前回より満足度が上がっていれば、改善が成功している証拠です。
8.NPS(推奨度)を測定して集患力を可視化する

NPS(Net Promoter Score)は、顧客ロイヤルティを測る世界標準の指標です。
NPSとは
「この病院を友人や家族に勧める可能性は、10点満点で何点ですか?」という1つの質問で測定します。
9〜10点をつけた人を「推奨者」、7〜8点を「中立者」、0〜6点を「批判者」に分類します。
NPSは「推奨者の割合 − 批判者の割合」で計算されます。
NPSの評価基準
NPSが+50以上なら非常に優秀、+10〜+50なら良好、0〜+10なら平均的、マイナスなら要改善です。
動物病院の平均的なNPSは+20〜+40程度と言われています。
NPSが高いと何が良いのか
NPSが高い、つまり推奨者が多い病院は、口コミによる新規患者獲得が自然に起こります。広告費をかけなくても、患者が患者を呼ぶ好循環が生まれます。
NPSを定期的に測定し、目標値を設定して改善に取り組むことで、長期的な成長が実現します。
9.実際の活用事例と成果
飼い主アンケートを戦略的に活用して成功した動物病院の事例を紹介します。
事例1:東京都の中規模病院
四半期ごとにタブレットアンケートを実施し、結果をスタッフ全員で共有していました。
「待ち時間が長い」という声が多かったため、オンライン予約システムを導入。待ち時間を30%削減し、次回のアンケートで満足度が20%向上しました。
患者の声の一部をホームページに掲載したところ、「ホームページの口コミを見て来た」という新規患者が月10件以上増加しました。
事例2:大阪府の小規模病院
紙のアンケートを毎月実施し、ポジティブなコメントを院内に掲示していました。
「スタッフの対応が素晴らしい」という声が多かったため、それをホームページのトップページに大きく掲載。「スタッフが優しいと聞いて選んだ」という新規患者が増えました。
スタッフのモチベーションも向上し、さらに良いサービスを提供する好循環が生まれました。
事例3:神奈川県の専門病院
NPSを測定し、推奨者と批判者にそれぞれヒアリングを行いました。
推奨者からは「専門的な治療ができる」「説明が丁寧」という声が、批判者からは「料金が高い」「予約が取りにくい」という声が集まりました。
料金の透明性を高めるため、ホームページに詳細な料金表を掲載。予約枠を増やし、夜間診療も拡充しました。
半年後のNPSは+15から+35に向上し、新規患者数も30%増加しました。
10.まとめ
飼い主アンケートは、信頼性の向上、サービス改善、そして効果的なマーケティングツールとして、動物病院経営に欠かせない施策です。患者の生の声は、何よりも価値のある情報源です。
成功のポイントは、回答しやすいアンケートを設計すること、その場で回答してもらう工夫をすること、集めた声をホームページで戦略的に見せること、ネガティブ意見を改善のチャンスと捉えること、そしてPDCAサイクルを回し続けることです。
まずは簡単な5問のアンケートを作り、次回来院される患者さん10人に試してみましょう。小さな一歩が、やがて大きな信頼性向上と集患効果につながります。
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【筆者紹介】 株式会社リバティーフェローシップ(動物病院経営ラボ) 代表:小澤直樹 動物病院・歯科医院専門のホームページ制作・経営コンサルティング会社。全国300以上の医療機関の集患支援実績を持ち、患者アンケート活用を含む総合的な信頼性向上施策をサポートしています。
