メールマーケティングで実現する動物病院のリピート率向上|ワクチン・健診リマインドの自動化

新規患者の獲得も重要ですが、既存患者のリピート率を高めることは、それ以上に経営の安定につながります。実際、新規患者を獲得するコストは、既存患者を維持するコストの5倍とも言われています。

動物病院において、ワクチン接種や健康診断といった予防医療は定期的な来院が必要です。しかし、飼い主さんが接種時期を忘れてしまい、来院が途切れるケースが少なくありません。

本記事では、メールマーケティングを活用して、ワクチンや健診のリマインドを自動化し、リピート率を劇的に向上させる方法を解説します。

 

目次

  1. なぜメールマーケティングが動物病院に効果的なのか
  2. リピート率向上がもたらす経営的メリット
  3. メール配信システムの選び方
  4. 顧客データベースの構築と管理
  5. ワクチンリマインドメールの設計
  6. 健康診断リマインドメールの最適化
  7. セグメント別メール配信戦略
  8. 開封率を高めるメールの書き方
  9. 自動化の設定とシナリオ設計
  10. 効果測定と改善のポイント

1.なぜメールマーケティングが動物病院に効果的なのか

予防医療は定期性が命

ワクチン接種は年1回、フィラリア予防は春から秋まで毎月、健康診断は年1〜2回と、動物病院の予防医療には明確な周期があります。この周期に合わせて適切なタイミングでリマインドすることで、確実な来院につながります。

メールは、このタイミングを逃さず、自動的に情報を届けられる最適なツールです。一度仕組みを作れば、手間をかけずに継続的にリマインドできます。

コストが極めて低い

ハガキでのリマインドは、印刷代、郵送代を合わせると1通あたり100円以上かかります。500人に送れば5万円です。一方、メール配信は1通あたり数円以下、場合によってはゼロコストで送れます。

年間で数十万円のコスト削減が可能になり、その分を他の施策に投資できます。

開封率とクリック率が測定できる

ハガキは送りっぱなしで、相手が読んだかどうか分かりません。しかしメールなら、何人が開封し、何人がリンクをクリックし、何人が予約したかが正確に測定できます。

このデータを分析することで、メールの内容を継続的に改善し、効果を高められます。

情報量に制限がない

ハガキは限られたスペースに情報を詰め込む必要がありますが、メールなら文章量に制限がありません。ワクチンの重要性、予防のメリット、よくある質問への回答など、詳細な情報を提供できます。

画像や動画へのリンクも貼れるため、視覚的に訴求することも可能です。

LINE・SMSとの組み合わせも効果的

メール単体ではなく、LINE公式アカウントやSMSと組み合わせることで、さらに高いリーチ率を実現できます。若年層にはLINE、中高年層にはメールといった使い分けも可能です。

2.リピート率向上がもたらす経営的メリット

安定した売上基盤の構築

新規患者だけに頼ると、集患施策が途切れた途端に売上が落ちます。一方、リピート率が高ければ、毎年一定数の来院が見込めるため、売上が安定します。

予防医療のリピート率が80%以上あれば、それだけで年間売上の大部分を確保でき、経営の安定性が格段に向上します。

患者生涯価値(LTV)の最大化

一人の患者さんが生涯で病院にもたらす売上を「患者生涯価値(LTV: Lifetime Value)」と言います。リピート率を10%向上させるだけで、LTVは大幅に増加します。

例えば、ワクチン接種だけで年1回来院する患者さんと、ワクチン・健診・定期診療で年4回来院する患者さんでは、10年間のLTVに数十万円の差が生まれます。

口コミと紹介の増加

定期的に来院している満足度の高い患者さんは、友人や知人に病院を紹介してくれる可能性が高くなります。リピート率向上は、新規患者獲得にも間接的に貢献します。

スタッフの業務効率化

電話でのリマインド業務は、スタッフにとって大きな負担です。1日に何十件も電話をかけ、留守電にメッセージを残し、折り返しを待つという作業は、時間も労力もかかります。

メールの自動配信システムを導入すれば、この業務がほぼゼロになり、スタッフはより付加価値の高い業務に集中できます。

3.メール配信システムの選び方

メールマーケティングを始めるには、専用の配信システムが必要です。GmailやOutlookから一斉送信することも技術的には可能ですが、大量送信はスパム判定されるリスクがあり、開封率も測定できません。

必要な機能

顧客データベース管理機能では、患者情報(名前、メールアドレス、ペット名、ペット種、ワクチン接種日など)を一元管理できることが必須です。

セグメント機能で、犬の飼い主だけ、猫の飼い主だけ、といった条件でメール送信先を絞り込めることも重要です。

自動配信機能(ステップメール)として、特定の日付や条件をトリガーにして自動的にメールを送る機能があれば、ワクチンリマインドの自動化が可能になります。

開封率・クリック率測定機能で、メールの効果を数値で把握できることも欠かせません。

テンプレート機能があれば、デザインの知識がなくても、見栄えの良いメールを作成できます。

おすすめのメール配信システム

国内で広く使われているシステムをいくつか紹介します。

「まぐまぐ」は老舗のメール配信サービスで、無料プランもありますが、機能が限定的です。

「Benchmark Email」は無料プランで月250通まで送信可能で、使いやすいインターフェースが特徴です。

「MailChimp」は世界的に人気のサービスで、無料プランもありますが、英語がメインです。

「配配メール」は国内企業向けで、サポートが手厚く、動物病院での導入実績もあります。

「Synergy!」は中小企業向けの顧客管理・メール配信システムで、高機能です。

予算と必要な機能に応じて選びましょう。月額3,000〜10,000円程度で、十分な機能を持つシステムが利用できます。

4.顧客データベースの構築と管理

メールマーケティングの基盤となるのが、正確な顧客データベースです。

収集すべき情報

最低限必要な情報として、飼い主さんの名前、メールアドレス、電話番号、ペットの名前、ペットの種類(犬・猫・その他)、ペットの生年月日(年齢)、最終来院日、ワクチン接種日、健康診断実施日があります。

できれば収集したい情報として、ペットの性別、去勢・避妊の有無、既往歴、飼い主さんの誕生日、飼い主さんの住所(郵便番号)も役立ちます。

データ収集の方法

初診時の問診票にメールアドレス欄を設け、「ワクチンや健診のお知らせをメールで受け取る」という同意欄にチェックしてもらいます。

院内にQRコードを掲示し、スマートフォンでメールアドレス登録できるようにすることも効果的です。

既存患者さんには、会計時や診察時に「メールでのお知らせ配信を始めました。よろしければご登録ください」と声をかけ、その場で登録してもらいます。

個人情報保護への配慮

メールアドレスは個人情報です。収集する際は、利用目的(ワクチンや健診のリマインド、健康情報の提供など)を明示し、同意を得る必要があります。

プライバシーポリシーをホームページに掲載し、「メール配信はいつでも解除できます」という選択肢を提示することも重要です。

データの定期的な更新

メールアドレスは変更されることがあります。エラーメール(配信エラー)が返ってきたら、次回来院時に「メールアドレスが変わりましたか?」と確認し、データベースを更新しましょう。

年に1回程度、全患者に「登録情報の確認」メールを送り、変更があれば更新してもらう仕組みも有効です。

5.ワクチンリマインドメールの設計

ワクチン接種は年1回の定期接種が基本です。接種から1年後にリマインドメールを自動送信することで、確実な再来院を促せます。

送信タイミングの最適化

ワクチン接種日の1ヶ月前に第1回目のリマインドメールを送ります。「そろそろワクチンの時期ですね。ご予約はお早めに」という内容です。

接種日の1週間前に第2回目のメールを送ります。「ワクチン接種予定日が近づいています。まだご予約がお済みでない方はお急ぎください」という内容です。

接種予定日を過ぎても来院がない場合は、2週間後に第3回目のフォローアップメールを送ります。「ワクチン接種はお済みでしょうか?体調に合わせてご予約ください」という内容です。

メールの件名の工夫

件名は開封率を大きく左右します。「〇〇ちゃん(ペット名)のワクチン接種時期のお知らせ」とペット名を入れると、開封率が上がります。

「【〇〇動物病院】ワクチン接種のご案内」と病院名を明示することで、安心感を与えます。

「お忘れではありませんか?」「そろそろ〇〇の時期です」といった優しい呼びかけも効果的です。

メール本文の構成

冒頭で「〇〇様、いつもありがとうございます」と挨拶します。ペット名を含めるとさらに親近感が増します。

次に、前回のワクチン接種日を明記します。「〇〇ちゃんは昨年の〇月〇日にワクチン接種を受けていただきました」という形です。

そして、次回の接種推奨時期を伝えます。「次回の接種推奨時期は〇月〇日頃です」と具体的な日付を示します。

ワクチンの重要性を簡潔に説明することも大切です。「ワクチン接種は、感染症からペットを守る大切な予防医療です」といった一文を添えます。

予約方法を明確に示します。「お電話(〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇)またはオンライン予約(リンク)でご予約ください」と複数の選択肢を提示します。

最後に「何かご不明な点があればお気軽にお問い合わせください」と締めくくります。

6.健康診断リマインドメールの最適化

健康診断は年1〜2回の実施が推奨されますが、飼い主さんの意識が低く、リマインドがないと受診率が低くなります。

年齢別のメッセージ

子犬・子猫(1歳未満)には、「成長期の健康チェックが大切です。今のうちから健康習慣を」というメッセージを送ります。

成犬・成猫(1〜7歳)には、「年1回の健康診断で病気の早期発見を」というメッセージが適切です。

シニア(7歳以上)には、「シニア期は病気のリスクが高まります。年2回の健診をおすすめします」と、頻度を増やす提案をします。

季節キャンペーンとの連動

春や秋に「健康診断キャンペーン」を実施し、メールで告知します。「今なら血液検査が20%OFF」「健診とワクチンのセットでお得」といった特典をつけると、受診率が上がります。

キャンペーン開始の2週間前に予告メール、開始当日に開始メール、終了1週間前にラストチャンスメールと、3回に分けて送ることで、取りこぼしを防げます。

健診の重要性を伝えるコンテンツ

メールには、健康診断で発見できる病気の例、早期発見のメリット、実際の症例(許可を得て)などの情報を盛り込みます。

「健診で初期の腎臓病が見つかり、早期治療で元気に過ごせています」といった具体例は、飼い主さんの心を動かします。

7.セグメント別メール配信戦略

すべての患者に同じメールを送るのではなく、属性ごとに内容を変えることで、効果が格段に向上します。

犬の飼い主と猫の飼い主

犬と猫では必要なワクチンや予防が異なります。犬の飼い主には狂犬病予防注射、フィラリア予防のリマインドを送りますが、猫の飼い主には不要です。

逆に、猫特有の病気(猫エイズ、猫白血病など)の情報は、猫の飼い主にのみ配信します。

ペットの年齢別

子犬・子猫の飼い主には、しつけ情報、社会化の重要性、避妊・去勢の時期などの情報を配信します。

シニアペットの飼い主には、老齢期の健康管理、介護の知識、終末期ケアなどの情報が役立ちます。

来院頻度別

定期的に来院している患者さんには、感謝のメッセージとともに、新しいサービスの案内を送ります。

しばらく来院がない患者さんには、「お元気ですか?何かお困りのことがあればご相談ください」といったフォローアップメールを送り、関係性を維持します。

地域別

台風や大雪などの災害時には、該当地域の患者さんにのみ「臨時休診のお知らせ」「ペットの防災対策」などの情報を送ります。

8.開封率を高めるメールの書き方

どんなに良い内容のメールでも、開封されなければ意味がありません。開封率を高めるテクニックがあります。

送信者名を明確に

送信者名は「〇〇動物病院」と病院名を明記します。「noreply@〜」といった無機質な送信者名は避けましょう。

「〇〇動物病院 院長 △△」と個人名を入れると、さらに親近感が増します。

最適な送信時間

一般的に、メールの開封率が高い時間帯は、朝7〜9時(通勤時間)、昼12〜13時(昼休み)、夜20〜22時(リラックスタイム)です。

動物病院のターゲット層である30〜50代の女性は、朝の家事が一段落した9〜10時や、夜のリラックスタイム20〜21時に開封率が高い傾向があります。

パーソナライズの活用

「〇〇様」とメール本文で名前を呼びかけることで、個別に送られたメールという印象を与えます。

「〇〇ちゃん(ペット名)の健康を守るために」と、ペット名を含めることで、さらに特別感が増します。

画像の適度な使用

テキストだけのメールは味気ないですが、画像が多すぎると読み込みが遅くなり、スパム判定されるリスクもあります。

バランスとしては、ヘッダー画像1枚と、本文中に1〜2枚の画像を配置するのが適切です。可愛いペットの写真や、院内の雰囲気が伝わる写真が効果的です。

9.自動化の設定とシナリオ設計

メールマーケティングの真骨頂は、自動化です。一度設定すれば、あとは自動的にメールが配信され続けます。

ステップメールの基本

ステップメールとは、特定のトリガー(きっかけ)をもとに、あらかじめ設定したシナリオに沿って自動的にメールを送る仕組みです。

例えば、ワクチン接種日を起点に、1年後の1ヶ月前、1週間前、接種予定日2週間後と、自動的にメールが送られます。

ワクチンリマインドの自動化シナリオ

ワクチン接種日から335日後(接種から約11ヶ月後)に第1回目のリマインドメールを自動送信します。内容は「そろそろワクチンの時期ですね。早めのご予約をおすすめします」です。

ワクチン接種日から358日後(約1年-1週間後)に第2回目のメールを送ります。内容は「ワクチン接種予定日が近づいています。ご予約はお済みですか?」です。

ワクチン接種日から379日後(予定日2週間後)に第3回目のフォローアップメールを送ります。内容は「ワクチン接種はお済みでしょうか?お忙しい中恐れ入りますが、ペットの健康のためぜひご来院ください」です。

新規患者向けウェルカムシリーズ

初診患者がメールアドレスを登録したタイミングで、ウェルカムメールを自動送信します。

初診当日には「ご来院ありがとうございました。今後とも〇〇ちゃんの健康をサポートいたします」というメールを送ります。

初診から3日後には「その後、〇〇ちゃんの体調はいかがでしょうか?気になることがあればお気軽にご相談ください」というフォローメールを送ります。

初診から1週間後には「動物病院の上手な使い方」「予防医療の重要性」といった教育的なコンテンツを送ります。

初診から1ヶ月後には「次回のワクチンや健診の時期」について案内します。

このように、初診から段階的にメールを送ることで、信頼関係を構築できます。

10.効果測定と改善のポイント

メールマーケティングは、効果を数値で測定し、継続的に改善することが重要です。

追跡すべき指標

開封率は、送信したメールのうち何%が開封されたかを示します。一般的な開封率は20〜30%程度で、これより低い場合は件名や送信者名、送信時間を見直します。

クリック率は、メール内のリンク(予約ページなど)が何%クリックされたかを示します。5〜10%が目安で、これより低い場合はCTA(行動喚起)の配置や文言を改善します。

コンバージョン率は、メールをきっかけに実際に予約や来院した割合です。これが最も重要な指標で、最終的な売上に直結します。

配信エラー率は、メールが届かなかった割合です。エラー率が高い場合は、データベースの精度に問題があります。

購読解除率は、メール配信を解除した人の割合です。1%以下が正常で、これより高い場合は配信頻度や内容を見直します。

A/Bテストの実施

件名、送信時間、本文の構成などを変えた2パターンのメールを用意し、どちらが効果的か比較します。

例えば、件名Aは「〇〇ちゃんのワクチン時期です」、件名Bは「大切なワクチンのお知らせ」として、それぞれ半数ずつに送信し、開封率を比較します。

効果の高かった方を採用し、継続的に改善を重ねることで、メールの精度が上がります。

月次レポートの作成

月に1回、メール配信の効果をまとめたレポートを作成します。送信数、開封率、クリック率、コンバージョン数、来院数、売上への貢献額を確認し、前月や前年同月と比較します。

このデータをもとに、改善点を洗い出し、次月の施策に反映させます。

よくある質問

メール配信を嫌がられませんか?

配信頻度が多すぎると嫌がられます。月1〜2回程度、有益な情報やリマインドに限定すれば、むしろ喜ばれます。また、いつでも配信解除できる選択肢を提示することで、安心感を与えられます。

高齢の飼い主さんはメールを見ますか?

確かに高齢者はメールよりも郵送やSMSを好む傾向があります。年齢層に応じて、メール・ハガキ・SMSを使い分けることが理想です。

メールアドレスの収集率が低いです。どうすればいいですか?

登録のメリットを明確に伝えましょう。「メール登録で初回診療10%OFF」「限定情報を配信」といった特典をつけると、登録率が上がります。

既存患者のメールアドレスをどう集めればいいですか?

次回来院時に「メール配信を始めました。ワクチンや健診のお知らせが届きます。登録しませんか?」と声をかけます。院内にQRコードを掲示し、待ち時間に登録してもらう方法も有効です。

まとめ

メールマーケティングは、動物病院のリピート率を劇的に向上させる強力なツールです。ワクチンや健診のリマインドを自動化することで、スタッフの負担を減らしながら、確実な再来院を促せます。

成功のポイントは、正確な顧客データベースを構築すること、適切なタイミングでリマインドメールを送ること、ペット名や飼い主名を使ってパーソナライズすること、自動化の仕組みを作ること、そして効果を測定して継続的に改善することです。

まずは100人の患者さんのメールアドレスを集め、ワクチンリマインドの自動配信から始めてみましょう。小さな一歩が、やがて大きなリピート率向上につながります。

メール配信システムの導入や自動化シナリオの設計にお困りの際は、動物病院専門のホームページ制作・コンサルティングサービスをご活用ください。顧客データベース構築から自動配信設定まで、実践的なサポートを提供いたします。

【筆者紹介】 株式会社リバティーフェローシップ(動物病院経営ラボ) 代表:小澤直樹 動物病院・歯科医院専門のホームページ制作・経営コンサルティング会社。全国300以上の医療機関の集患支援実績を持ち、メールマーケティングを含む総合的なリテンション戦略をサポートしています。