ホームページへのアクセスを増やす第一歩は、「正しいキーワード選定」です。
しかし、多くの動物病院は、このキーワード選定で大きな失敗をしています。例えば、「犬」「猫」「病院」といった、極めて広い全国キーワードで対策を試みたり、自分たちが思い込んでいるキーワードだけで対策を進めたりしています。
その結果、いくら対策を施しても、来院に直結しないアクセスばかり増えたり、そもそもアクセスが増えなかったりするのです。
キーワード選定は、SEO対策全体の成否を左右する最も重要なステップです。本記事では、動物病院が失敗しないキーワード選定の方法を、検索ボリューム、競争性、意図の「3軸」から、具体的なポイント5つとともに詳しく解説します。
目次
- キーワード選定が重要な理由
- 検索ボリュームの理解と活用
- 競争性(難易度)の判断方法
- 検索意図の読み方
- ポイント1:全国キーワードから地域キーワードへのシフト
- ポイント2:単一キーワードから複合キーワードへ
- ポイント3:顕在ニーズから潜在ニーズへのアプローチ
- ポイント4:季節性を考慮したキーワード選定
- ポイント5:競合分析から自院の強みキーワードを発見
- 実例:失敗と成功のキーワード選定
- まとめ
キーワード選定が重要な理由
間違ったキーワード選定の代償
キーワード選定を誤ると、その後のすべてのSEO対策が無駄になります。
例えば、ある動物病院が「犬 病院」というキーワードで上位表示を達成したとしましょう。月間検索ボリュームは50,000件と莫大です。しかし、その50,000件のアクセスの中には、「犬用の病院の薬について」「犬の予防接種」「犬の医療保険」など、来院に直結しないアクセスばかりが含まれているのです。
結果として、月間10,000アクセスがあるにもかかわらず、月間新患数は3名という、投資対効果の著しく低い状況になってしまいます。
正しいキーワード選定がもたらす効果
一方、「渋谷 犬 皮膚科」というキーワードで上位表示を達成した別の動物病院では、月間検索ボリュームは150件に過ぎません。しかし、この150件のアクセスのほぼすべてが「渋谷で皮膚科の診療を受けたい」という、極めて来院意欲の高いユーザーなのです。
結果として、月間150アクセスで、月間25名の新患を獲得するという、投資対効果に優れた状況になるのです。
この例から分かることは、「大きなボリュームの全国キーワード」よりも、「小さなボリュームの地域+症状キーワード」の方が、はるかに集患効果が高いということです。
キーワード選定の3軸による判断
キーワードの良し悪しを判断するには、以下の3軸を総合的に評価する必要があります。
| 軸 | 説明 | 評価基準 |
| 検索ボリューム | そのキーワードが月間どれくらい検索されているか | 多すぎず、少なすぎず(100~500件が理想) |
| 競争性(難易度) | そのキーワードでの上位表示難易度 | 低~中程度(医療機関サイトが少ない) |
| 検索意図 | そのキーワードで検索する人は何を知りたいのか | 来院直結型(「地域+診療科目」など) |
これら3軸がすべて揃ったキーワードを選定することが、キーワード選定の最優先課題なのです。
検索ボリュームの理解と活用

検索ボリュームの意味
検索ボリュームとは、Googleで月間どれくらいの人がそのキーワードで検索しているかを示す数値です。
Googleキーワードプランナー、SEMrush、Ahrefs などのツールで確認できます。
動物病院にとって最適な検索ボリュームの範囲
一般的なSEO対策では「検索ボリューム=多いほど良い」と考えられがちですが、動物病院では異なります。
| ボリュームレンジ | 特徴 | 推奨度 |
| 10,000件/月以上 | 全国規模のキーワード。競争度が極めて高い | ✗ 非推奨 |
| 1,000〜10,000件/月 | 広域キーワード。中程度の競争度 | △ 中程度 |
| 100〜1,000件/月 | 地域キーワード。低~中程度の競争度 | ◎ 推奨 |
| 100件/月以下 | ニッチキーワード。競争度が低いが、来院確度が高い | ◎ 推奨 |
動物病院の場合、「100~1,000件/月」「100件/月以下」の「地域+症状」キーワードに注力することが、最も効率的なアプローチなのです。
検索ボリュームのトレンド
季節によって、検索ボリュームは大きく変動します。
例えば、「犬 予防接種」というキーワードは、春(予防接種シーズン)に月間3,000件の検索があるのに対し、冬は月間500件まで低下します。
このようなトレンドを理解し、季節ごとに対策キーワードを変更することで、年間を通じた安定したアクセス獲得が可能になります。
競争性(難易度)の判断方法
競争性とは何か
競争性とは、そのキーワードでの上位表示難易度を示します。同じ検索ボリュームのキーワードでも、競争性によって、上位表示の難易度は大きく異なります。
競争性を判断する3つの方法
方法1:Google検索結果の確認
そのキーワードで実際に検索し、上位表示されているサイトを確認することで、競争状況が見えます。
| 上位表示サイトの特徴 | 競争度 |
| 大規模ポータルサイト、大手チェーン医院、メディアサイトが多い | 高い |
| 地域の小規模医院、ローカルブログが混在している | 中程度 |
| 小規模医院、個人ブログが大半 | 低い |
動物病院にとって有利なのは、「中程度」~「低い」の範囲です。
方法2:被リンク数の確認
上位表示されているサイトの被リンク数(他サイトからのリンク数)を確認することで、競争度がわかります。
被リンク数が多いサイトが多ければ多いほど、競争が激しいということです。Ahrefs、SEMrush などのツールで確認できます。
方法3:キーワード難易度ツールの活用
SEMrush、Ahrefs などのツールには、「キーワード難易度」という指標があり、0~100のスコアで難易度を示します。
| 難易度スコア | 判定 |
| 0~20 | 低い(容易) |
| 21~50 | 中程度 |
| 51~80 | 高い |
| 81~100 | 極めて高い(困難) |
動物病院にとっては、難易度20~50の「低~中程度」のキーワードが最適です。
検索意図の読み方
検索意図とは何か
検索意図とは、そのキーワードで検索するユーザーが「何を知りたいのか」という、隠れたニーズを指します。
4つの検索意図タイプ
Googleは検索意図を、以下の4つのタイプに分類しています。
| タイプ | 説明 | 動物病院での例 |
| Informational(情報収集型) | 情報を知りたい | 「犬 皮膚病 症状」 |
| Navigational(ナビゲーション型) | 特定のサイトに到達したい | 「◇◇動物病院」 |
| Commercial(商圏型) | 購入・利用を検討中 | 「皮膚病 治療 費用」 |
| Transactional(取引型) | 購入・利用を決定済み | 「渋谷 皮膚科 予約」 |
動物病院の集患に最も直結するのは、**Transactional(取引型)とCommercial(商圏型)**です。
特に「Transactional型」のキーワードは、「渋谷 皮膚科 予約」「東京 犬 眼科 夜間」など、来院直前の段階のユーザーを獲得できるため、最優先で対策すべきキーワードなのです。
検索意図の推測方法
実際にGoogleで検索し、上位表示されている記事やページを確認することで、Googleが判断している「そのキーワードの検索意図」が推測できます。
例えば、「犬 皮膚病」で検索すると、上位に表示されるのは「症状の説明ページ」「治療方法の記事」など、情報系のコンテンツばかりです。これは「このキーワードは情報収集型」だとGoogleが判断している証拠です。
一方、「渋谷 皮膚科」で検索すると、Googleマップのビジネスプロフィール情報や医院のホームページが上位表示されます。これは「このキーワードは取引型」だとGoogleが判断している証拠です。
ポイント1:全国キーワードから地域キーワードへのシフト

なぜ全国キーワードは失敗するのか
「犬 皮膚病」というキーワードは、月間15,000件の検索ボリュームがあります。一見、大きな集客機会に見えます。
しかし、この15,000件には、「東京の飼い主」「大阪の飼い主」「北海道の飼い主」など、日本全国の飼い主様が含まれています。
実際には、「東京のあなたの医院に来院する可能性のある飼い主様」は、わずか50件程度に過ぎないのです。そして、その50件を獲得するためには、全国の無数の医院との競争に勝たなければなりません。
地域キーワードの圧倒的な優位性
一方、「渋谷 皮膚科」というキーワードは、月間200件の検索ボリュームに過ぎません。しかし、この200件のほぼすべてが「渋谷で皮膚科の診療を受けたい飼い主様」です。
つまり、200件すべてが、「あなたの医院の見込み客」なのです。そして、競争相手は渋谷周辺の10数件の医院に限定されます。
全国キーワード vs 地域キーワルの効率性比較
| 指標 | 全国キーワード「犬 皮膚病」 | 地域キーワード「渋谷 皮膚科」 |
| 月間検索ボリューム | 15,000件 | 200件 |
| あなたの地域での割合 | 約0.3%(50件) | 約100%(200件) |
| 競争相手数 | 数千 | 10数件 |
| 上位表示難易度 | 極めて高い | 低~中程度 |
| 来院確度 | 低い(3%程度) | 高い(50%以上) |
このように、地域キーワードの方が、投資対効果に優れているのです。
実装方法
動物病院のホームページでは、以下のように地域キーワードを取り込みます。
- トップページ:「〇〇市で最も選ばれる動物病院」
- ページタイトル:「渋谷の動物病院ならサンシャイン動物クリニック」
- ブログ記事:「渋谷で犬の皮膚病治療が得意な医院選びのポイント」
地域キーワードを前提にした、ページタイトル、本文、ブログ記事を戦略的に配置することで、地域SEOの効果が最大化されるのです。
ポイント2:単一キーワードから複合キーワードへ

単一キーワードの限界
「動物病院」「皮膚科」といった、単一の単語で成り立つキーワードは、検索ボリュームが大きいものの、検索意図が曖昧で、上位表示難易度も極めて高いです。
複合キーワードの優位性
「渋谷 動物病院 皮膚科」「渋谷 犬 皮膚科 夜間」といった、複数の単語を組み合わせた「複合キーワード」は、検索ボリュームが小さいものの、検索意図が明確で、上位表示難易度が格段に低いです。
単一キーワード vs 複合キーワード
| 指標 | 単一「皮膚科」 | 複合「渋谷 犬 皮膚科 夜間」 |
| 月間検索ボリューム | 50,000件 | 80件 |
| 検索意図の明確性 | 低い(情報系) | 高い(取引型) |
| 上位表示難易度 | 極めて高い | 低い |
| 来院確度 | 低い | 極めて高い |
複合キーワードで上位表示されることで、来院直前段階のユーザーを獲得できるのです。
複合キーワードの組み立て方
複合キーワードは、以下の要素を組み合わせることで作成されます。
| 要素 | 例 |
| 地域 | 渋谷、新宿、東京 |
| 対象動物 | 犬、猫 |
| 診療科目 | 皮膚科、眼科、整形外科 |
| 症状・特徴 | 夜間、日曜診療、予約不要 |
これらを組み合わせることで、「渋谷 犬 皮膚科 夜間」のような、複雑な検索意図を持つユーザーをターゲットできるのです。
ポイント3:顕在ニーズから潜在ニーズへのアプローチ
顕在ニーズと潜在ニーズの違い
顕在ニーズ:ユーザーが既に認識している、明確なニーズ 例:「渋谷 皮膚科」「犬 皮膚病 治療」
潜在ニーズ:ユーザーが認識していない、隠れたニーズ 例:「犬 痒い」「猫 毛 抜ける」
潜在ニーズへのアプローチの価値
顕在ニーズは、競合医院もすべて対策しているため、上位表示難易度が高いです。
一方、潜在ニーズは、「ユーザーが何か問題を認識している段階」であり、その後「医院を探す段階」へ進む可能性が高いです。
つまり、潜在ニーズで上位表示されることで、「将来の見込み客」を早期に獲得できるのです。
例:ブログ記事による潜在ニーズへのアプローチ
キーワード:「犬 痒い 原因」(月間300件、低競争度)
記事タイトル:「犬が痒がる5つの原因と対応方法—皮膚病の可能性も」
記事本文:原因の説明+「症状が続く場合は医師の診察をお勧めします」
CTA:「皮膚病の無料相談はこちら」ボタン
このようなアプローチにより、「今まさに犬が痒がっていて困っている飼い主様」を獲得し、やがて来院へと導くのです。
ポイント4:季節性を考慮したキーワード選定
季節性による検索ボリュームの変動
動物病院の診療には、明確な季節性があります。
| 季節 | キーワード | ボリューム変化 |
| 春 | 「犬 予防接種」「フィラリア予防」 | 月間3,000件→5,000件 |
| 夏 | 「犬 中耳炎」「猫 嘔吐」(熱中症関連) | 月間500件→2,000件 |
| 秋 | 「犬 皮膚病」「アレルギー」 | 月間800件→1,500件 |
| 冬 | 「猫 下痢」「感染症」 | 月間600件→1,200件 |
季節性への対応戦略
- 年間カレンダーの作成:季節ごとのキーワードを整理し、事前にブログ記事を準備
- 投稿タイミング:そのキーワードが検索ボリュームのピークを迎える、1~2ヶ月前に投稿
- 継続的な更新:前年の記事をリバイスして、最新情報に更新して再投稿
例えば、「犬 予防接種」で検索ボリュームが増える春(3月~4月)に向けて、1月~2月に記事を投稿することで、春の検索ピーク時に上位表示される可能性が高まります。
ポイント5:競合分析から自院の強みキーワードを発見
競合医院のキーワード戦略を分析
Google Search Console、SEMrush などのツールを使用して、競合医院が「どのキーワードで上位表示されているのか」を分析することで、市場の隙間が見えます。
競合分析の方法
- 地域内の上位表示医院のホームページをリスト化
- 各医院が対策しているキーワードを列挙
- 「すべての医院が対策しているキーワード」と「対策している医院が少ないキーワード」を分類
- 「対策している医院が少ないキーワード」の中から、あなたの医院の強みに合ったキーワドを選定
自院の強みを活かしたキーワード選定
競合分析の結果、「対策している医院が少ないキーワード」が見つかったら、それがあなたの医院の「ブルーオーシャン」(競争のない領域)です。
例えば、競合医院がすべて「一般診療」に特化しているのであれば、あなたの医院が「眼科診療に特化」「24時間対応」といった専門性を持つ場合、以下のようなキーワードで優位性を持つことができます。
- 「渋谷 動物病院 眼科」
- 「渋谷 動物病院 夜間」
- 「渋谷 犬 眼科 手術」
実例:失敗と成功のキーワード選定

失敗事例:全国キーワード×広範な診療対象
ある新規開院医院では、開業当初、「犬 病院」「猫 病院」といった全国キーワードでの対策を試みました。
状況
- ホームページのタイトル:「東京の動物病院ならサンシャイン動物クリニック」
- ブログ記事:「犬の病気について」「猫の一般診療について」など、極めて広範なテーマ
- 対策期間:6ヶ月
結果
- 上位表示されたキーワード:なし
- 月間アクセス:50件程度
- 月間新患数:2名
失敗の原因
- 全国キーワードは競争度が高すぎて、新規医院では上位表示が困難
- 検索ボリュームは多くても、来院に直結しないアクセスばかり
成功事例:地域+症状キーワード×診療特化
別の新規開院医院では、開業当初、「渋谷 皮膚科」「渋谷 犬 アレルギー」といった地域キーワードに特化した対策を進めました。
戦略
- 診療対象を「皮膚疾患」「アレルギー」に特化
- ホームページのタイトル:「渋谷の皮膚疾患専門動物病院」
- ブログ記事:「犬のアレルギーの原因と対応」「皮膚病の早期発見」など、診療特化テーマを月8記事投稿
- 対策期間:3ヶ月
結果
- 上位表示されたキーワード:「渋谷 皮膚科」(3位)、「渋谷 犬 皮膚病」(5位)、「渋谷 アレルギー」(7位)
- 月間アクセス:450件
- 月間新患数:28名
成功の理由
- 地域キーワドは競争度が低く、新規医院でも上位表示が可能
- 診療特化により、本当の見込み客(皮膚疾患で困っている飼い主様)に絞り込み
- 複合キーワードで検索意図が明確
まとめ
キーワード選定は、SEO対策全体の基礎となる最も重要なステップです。正しいキーワード選定ができれば、その後の対策は必ず成功へと導かれるのです。
ポイント5つの要点
- 全国キーワード→地域キーワード:地域限定で、見込み客に絞り込む
- 単一キーワード→複合キーワード:検索意図を明確にし、来院直結型のユーザーを獲得
- 顕在ニーズ→潜在ニーズ:ユーザーがまだ医院を探していない段階でアプローチ
- 季節性の無視→季節を活用:季節ごとの検索ボリュームを予測し、事前投稿
- 競合と同じキーワード→自院の強みキーワード:競合とは異なる、自院の専門性を活かす
検索ボリューム、競争性、検索意図の「3軸」を総合的に判断し、「100~1,000件/月」「競争度低~中程度」「取引型またはコマーシャル型」の複合地域キーワードに注力することが、最も効率的な集患戦略なのです。
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