患者様がホームページで「この医院は信頼できるのか」を判断するとき、最も重視する「隠れた指標」が「学会発表」「論文実績」です。
しかし、多くの医院は「学会発表がある」という事実は知っていながら、ホームページには掲載していません。
なぜなら「学会発表」「論文」は「難しい学術用語」で満ちており、一般の患者様には「理解不能」だと思われているからです。
確かに「膵リパーゼ値の時系列的変動が、急性膵炎の予後判定の新指標となりうる」という学術用語では、患者様は理解できません。
しかし、この内容を「膵臓の数値変化から、膵炎の回復状況をより早く判断できる新しい方法を開発しました」と翻訳すれば、患者様は「この医院は、医療を進化させるために、研究を続けているんだ」と理解できるのです。
本記事では、学会発表・論文実績を「見える化」し、親しみやすく患者様に伝える方法を詳しく解説します。
目次
- 学会発表・論文実績の現状と問題点
- 学術実績が「権威性」を生む理由
- 学会発表と論文の分類と説明方法
- 「難しい学術用語」を「親しみやすい表現」に翻訳
- 学会発表内容の「患者メリット」への変換
- 論文実績の「わかりやすい」掲載方法
- 「研究が患者様にもたらすもの」の説明
- 年表形式での研究実績の可視化
- 学会発表の「動画・スライド」による説明
- 研究チームの「成長過程」の発信
- 実例:学会実績掲載による権威性向上
- まとめ
1.学会発表・論文実績の現状と問題点
医院側の「掲載躊躇」
多くの医院が「学会発表がある」「論文を発表している」にもかかわらず、ホームページに掲載していないのはなぜでしょうか?
理由は「学術用語が難しすぎて、患者様が理解できないのではないか」という懸念です。
確かに「学会発表」「論文」は、医学的に正確であるため、一般向けには「理解不能な表現」になってしまうのです。
患者様の「権威性」判定の機会喪失
その結果、患者様は「この医院の研究実績」という「権威性を示す最重要な情報」を受け取ることができず、医院側も「自院の研究姿勢」をアピールする機会を失っているのです。
「研究=イコール=高度な医療」という認識の欠落
患者様の無意識では「学会で発表している医院=最先端の医療を提供している医院」という「権威性判定」が形成されます。
しかし、この情報がホームページに見えなければ、患者様は「この医院は、いわゆる『普通の医院』」という評価をしてしまうのです。
2.学術実績が「権威性」を生む理由
「研究能力」=「診療能力」という患者心理
患者様は無意識的に「新しい診断法や治療法を開発・研究している医院」を「最先端の医療を提供する医院」と評価します。
つまり「学会発表」「論文発表」という「研究実績」は「この医院の医療水準の高さ」を示す、最も効果的な「証明」なのです。
「継続的な学び」の姿勢の表現
学会発表や論文執筆には「膨大な時間と努力」が必要です。
その過程を見ることで、患者様は「この医院は、診療だけでなく、医学の進歩に貢献することを考えているんだ」という「姿勢」を感じるのです。
「他の医院との差別化」
多くの医院は「学会発表」「論文実績」を発信していません。
つまり「学会実績をホームページに掲載している医院」は、自動的に「他の医院と異なる、より高度な医療を提供する医院」というイメージが形成されるのです。
3.学会発表と論文の分類と説明方法
「学会発表」の種類
学会発表には「口頭発表」「ポスター発表」「シンポジウム参加」など、複数の形式があります。
これらを分類し、それぞれの「価値」を患者様にわかりやすく説明することが重要です。
学会発表の分類と説明:
口頭発表:「学会場で、医学的な発見を直接、医療者に説明する、最も権威性の高い形式」
ポスター発表:「学会場に掲示し、参加者との直接的なディスカッションを通じて、医学的知見を共有する形式」
シンポジウム参加:「複数の医療者とともに、特定のテーマについて意見交換する、最新の医学知識を吸収する重要な機会」
「論文」の種類
学術雑誌への論文発表にも「査読付き論文」「学会誌への発表」など、複数の形式があります。
論文の分類と説明:
査読付き論文:「複数の専門家に内容を審査され、学術的価値が認められた、最も権威性の高い論文」
学会誌への発表:「学会の公式雑誌に掲載された、学会として認定した学術的価値のある論文」
4.「難しい学術用語」を「親しみやすい表現」に翻訳
翻訳の原則
学術用語を患者向けに翻訳する際の原則は「医学的正確性を失わない範囲で、できるだけ日常用語を使う」ことです。
具体的な翻訳例
悪い例(学術用語のまま): 「膵リパーゼ値の時系列的変動が、急性膵炎の予後判定の新指標となりうる」
良い例(患者向け翻訳): 「膵臓の数値変化から、膵炎の回復状況をより早く判断できる新しい方法を開発しました。これにより、患者様の治療方針がより適切に決定でき、回復の加速が期待できます。」
複数のレベルの説明を用意
ホームページでは「複数のレベルの説明」を用意することが効果的です。
レベル1(超簡潔版): 「膵炎の診断がより正確になる新しい検査方法を開発」
レベル2(詳細版): 「膵臓の数値変化から、膵炎の回復状況をより早く判断できる新しい方法を開発しました。これにより、患者様の治療方針がより適切に決定でき、回復の加速が期待できます。」
レベル3(学術版): 「膵リパーゼ値の時系列的変動パターンが、急性膵炎の予後判定の新指標として機能することを実証しました。これは、従来の単一時点での数値測定より、より正確な予後判定を可能にします。」
患者様は「レベル2」を読むことで理解でき、医学的知識を持つ人は「レベル3」で詳細を確認できるのです。
5.学会発表内容の「患者メリット」への変換
学会発表内容の「患者メリット」への変換
「発見」→「患者様へのメリット」への変換
学会発表の内容を「患者様のメリット」に変換することが重要です。
変換の手順:
- 発見の内容を理解:「〇〇の新しい診断方法を開発」
- その診断方法の価値を理解:「診断がより正確になる」
- 患者様へのメリットに変換:「正確な診断により、適切な治療が可能になり、回復が早くなる」
具体的な変換例
学会発表例1:「難治性皮膚疾患の原因特定における、新しい遺伝子検査法の有用性」
患者メリット変換: 「従来、原因が特定できなかった皮膚疾患について、新しい遺伝子検査により、正確な原因を特定できるようになりました。これにより、無駄な治療を避け、最初から最適な治療を開始できるため、患者様の苦痛軽減と治療期間の短縮が実現されます。」
学会発表例2:「高齢犬における、多臓器機能低下の予測モデルの開発」
患者メリット変換: 「高齢犬の複数の臓器機能について、将来的な低下を予測できる新しい診断方法を開発しました。これにより、臓器障害が顕在化する前に、予防的な対応が可能になり、高齢犬の生活の質(QOL)の維持が実現されます。」
6.論文実績の「わかりやすい」掲載方法
「論文タイトル」を患者向けに編集
学術論文のタイトルは「学術的正確性」を優先しているため、一般向けには「わかりにくい」ことがほとんどです。
論文を紹介する際には「学術タイトル」の他に「患者向けの短いタイトル」を付けることが効果的です。
例:
学術タイトル:「FoxO3遺伝子発現の調節による、犬の免疫機能の加齢変化に関する研究」
患者向けタイトル:「年をとると低下する免疫力を改善する、新しい遺伝子療法を開発」
「論文の背景」「研究の意義」を説明
論文自体が複雑であるため、論文を紹介する際には「なぜ、この研究が必要だったのか」「この研究が何を解決するのか」という「背景」と「意義」を説明することが重要です。
記載例:
「【研究の背景】 高齢犬の免疫機能低下は、感染症や腫瘍のリスク増加につながります。
【研究の意義】 この研究により、免疫機能の低下メカニズムが明確になり、予防的な治療が可能になります。
【患者様へのメリット】 高齢犬の感染症・腫瘍リスクを低減し、健康寿命の延伸が期待できます。」
7.「研究が患者様にもたらすもの」の説明
「研究が患者様にもたらすもの」の説明
研究から「実臨床への応用」までの流れを示す
患者様は「学会発表」「論文」という「研究」と「自分たちのペットの治療」の「つながり」が見えないことがあります。
研究から実臨床応用までの流れを明確に示すことが重要です。
記載例:
「【研究段階】難治性皮膚疾患の新しい診断方法を開発
↓(3年間の臨床試験)
【臨床試験段階】新しい診断方法が実臨床で有効であることを確認
↓(学会発表・論文発表)
【実臨床への応用】当医院では、この新しい診断方法を導入し、患者様のために活用しています
↓
【患者様のメリット】難治性皮膚疾患の正確な診断が可能になり、治療効果が大幅に向上しました」
8.年表形式での研究実績の可視化
「研究の軌跡」を年表で示す
複数の研究実績がある場合、それらを「年表形式」で示すことで、患者様は「この医院の研究が、いかに継続的かつ発展的か」を視覚的に理解できます。
記載例:
2015年:「膵炎の新しい診断方法」について学会発表
↓
2016年:同テーマで査読付き論文を発表
↓
2017年:「皮膚疾患の遺伝子解析」について新規研究開始
↓
2018年:同テーマで学会シンポジウムに参加
↓
2019年:「高齢犬の免疫機能」に関する研究を開始
↓
2020年:複数の研究が国際学会で発表
このような「年表」を見ることで、患者様は「この医院は、継続的に医学の進歩に貢献している」という印象を持つのです。
9.学会発表の「動画・スライド」による説明
「発表スライド」の公開
可能であれば、学会発表時のスライドの一部を、患者様向けに簡潔に翻訳・加工して、ホームページに掲載することが効果的です。
ビジュアルにより、患者様はより具体的に「研究内容」を理解できるのです。
「研究内容の解説動画」の制作
複雑な研究内容については、院長自身が「患者向けに簡潔に解説する動画」を制作・掲載することも効果的です。
「このような研究を通じて、患者様の治療がより良くなっています」というメッセージが、動画を通じて直接患者様に届くのです。
10.研究チームの「成長過程」の発信
「新しい研究分野への進出」の発信
医院が「新しい研究分野に進出した」という情報も、患者様に発信することが効果的です。
「現在、当医院では『〇〇疾患の新しい治療法』に関する研究を開始しています。来年の学会発表を目指し、プロジェクトが進行中です。」
このような「現在進行中の研究」の発信により、患者様は「この医院は、常に医学を進化させている」という最新の印象を持つのです。
スタッフの「研究参加」の可視化
複数のスタッフが研究に参加している場合、その情報も発信することが重要です。
「この研究は、院長、獣医師B、看護師Aの3名が協力して実施しています。」
このように「複数スタッフの協働」を示すことで、患者様は「この医院は、チーム全体で医学の進歩に貢献している」という評価をするのです。
11.実例:学会実績掲載による権威性向上
事例:学会発表・論文実績をホームページに「見える化」して初診患者の「医院への信頼度」が26%向上
ある動物病院は「複数の学会発表」「論文発表」の実績がありながら、ホームページには掲載していませんでした。
患者様からは「この医院の医療水準がわかりにくい」という評価を受けていました。
改善前の状況
- ホームページ上の学会実績掲載:なし
- 初診患者の「医院への信頼度」:71%
- 「医院が研究・教育に力を入れているか」の認識:15%
- 他医院との「差別化感」:18%
実施した改善
- 過去5年間の学会発表(20件)をリストアップ
- 学術用語を「患者向け翻訳」に変換
- 各発表について「患者メリット」を説明
- 論文実績(5件)を「背景・意義・メリット」とともに掲載
- 年表形式で研究実績を可視化
- 「発表スライド」の一部を患者向けに加工して掲載
- 研究チーム構成を明示
- 「現在進行中の研究プロジェクト」も発信
改善結果
学会実績の「見える化」から2ヶ月後、患者様の医院に対する評価が大幅に向上しました。
| 指標 | 改善前 | 改善後 | 変化 |
| 初診患者の「医院への信頼度」 | 71% | 97% | +26ポイント |
| 「医院が研究に力を入れている」認識 | 15% | 82% | +67ポイント |
| 他医院との「差別化感」 | 18% | 71% | +53ポイント |
| 「最先端の医療を提供」という評価 | 22% | 79% | +57ポイント |
特に「学会発表」「論文」という「権威性を示す情報」により、患者様の医院に対する信頼度が飛躍的に向上しました。
12.まとめ
学会発表・論文実績は「医院の権威性を示す、最も効果的な情報」です。
しかし「学術用語のままでは、患者様に理解されない」という課題があります。
この課題を解決する方法が「難しい学術用語を患者向けに翻訳すること」です。
複数レベルの説明、患者メリットへの変換、年表による可視化—これらの工夫により、学会実績は「患者様に理解され、医院への信頼度を劇的に高める、最強の信頼構築ツール」へと進化するのです。
学会実績「見える化」の要点
- 過去5年間の学会発表をリストアップ
- 学術用語を「患者向け翻訳」に変換
- 各発表について「患者メリット」を説明
- 論文実績を「背景・意義・メリット」とともに掲載
- 年表形式で研究実績を可視化
- 複数レベルの説明を用意
- 「発表スライド」の一部を患者向けに加工
- 研究チーム構成を明示
- 「現在進行中の研究」も発信
学会実績の「見える化」により、医院の権威性が確立され、患者様の信頼度と満足度が同時に向上するのです。
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