多くの動物病院のホームページには、FAQページがあります。
しかし、そのFAQの多くは「医院側が想定した質問」であって、「実際に患者様が持っている疑問」ではありません。
結果として、FAQページは「ユーザーの疑問を解決せず、ただ存在しているだけ」という状況になっているのです。
一方で、「実際の患者様の相談内容」から導き出したFAQは、ユーザーの心を直撃します。
なぜなら、その質問は「実在する悩み」だからです。
本記事では、電話相談、メール問い合わせ、来院患者様との会話から、「顧客の本当の声」を集めて、「実践的で、組織化されたFAQコンテンツ」に転換する方法を、詳しく解説します。
目次
- 従来型FAQの問題点
- 「実際の患者様の質問」の重要性
- 患者様の声の「集め方」
- 相談内容の「分類と整理」
- 相談内容から「FAQ質問」への転換方法
- FAQ回答の「わかりやすさ」工夫
- FAQ から「ブログ記事」への展開
- 定期的なFAQ更新と改善
- ユーザー満足度の測定
- 実例:FAQページ改善による相談数増加
1.従来型FAQの問題点

「医院側の想定」で作られたFAQ
多くの医院のFAQは、以下のような「医院側が想定した質問」になっています。
Q1:初診の際に、何を持ってくればいいですか? Q2:予約は必要ですか? Q3:診察にはどのくらい時間がかかりますか? Q4:ペット保険は使えますか?
確かに、これらは「基本的な質問」ですが、実際の患者様が最も知りたい「医学的な質問」がほぼ含まれていないのです。
「実際の悩み」との乖離
実際に患者様が持っている疑問は、以下のようなものです。
「うちの犬の嘔吐は、どのくらい深刻ですか?」 「症状が出たばかりですが、今すぐ来院する必要がありますか?」 「この症状で、手術が必要になるんでしょうか?」 「治療にはどのくらい時間がかかりますか?」
しかし、多くの医院のFAQには、これらの「実際の悩み」が反映されていないのです。
FAQページの「見られなさ」
結果として、FAQページは「ユーザーに見られない」という状況が生じます。
ユーザーが求めている質問が掲載されていないため、FAQページを訪問しても「欲しい情報がない」と判断され、すぐに離脱してしまうのです。
2.「実際の患者様の質問」の重要性

ユーザーの「真の悩み」を把握できる
実際の患者様の質問は、医院側が想定していない「真の悩み」を浮き彫りにします。
例えば、「夜間に症状が出たが、今すぐ来院する必要があるのか」という質問が頻繁にある場合、医院側は「夜間の判断基準を、ホームページに示すべき」という改善ポイントが明確になるのです。
「信頼度」の向上
実際の患者様の質問に答えることで、ユーザーは「この医院は、患者様の本当の悩みを理解している」という信頼感を抱くのです。
ホームページのアクセス増加
「実際の患者様の質問」は、検索エンジンでも検索されやすいキーワードを含んでいます。
例えば、「犬 嘔吐 いつ病院に行くべき」という質問は、多くのユーザーが検索するキーワードです。
このような質問をFAQに含めることで、Google検索からのアクセスも増加するのです。
3.患者様の声の「集め方」

方法1:電話相談での「質問メモ」
受付スタッフが、電話での相談時に「どのような質問を受けたか」を記録することが重要です。
毎日の電話相談から、以下のような「質問リスト」を作成します。
「症状が出たばかりですが、何日待っても大丈夫ですか?」 「この症状は、手術が必要になりますか?」 「治療にはどのくらい費用がかかりますか?」
このような「実際の質問」を定期的に記録することで、患者様の「真の悩み」が明確になるのです。
方法2:メール問い合わせの「分析」
ホームページのお問い合わせフォームから送信されるメールを、定期的に分析することが重要です。
月ごとに、「どのような質問が多いのか」を集計し、「頻出する質問」を特定します。
例えば、9月は「予防接種の時期についての質問」が多く、冬場は「嘔吐・下痢についての質問」が多い—というように、季節別の傾向も把握できるのです。
方法3:来院患者様との会話「意見交換」
受付やカウンセリング時に、患者様と会話する際に「何か不安なことはありませんか?」という開かれた質問をすることが重要です。
スタッフが、患者様の「言外の不安」や「隠れた疑問」をキャッチできるのです。
方法4:Google Analytics での「検索キーワード分析」
Google Search Consoleを活用して、ユーザーが「どのようなキーワードでホームページを訪問したか」を分析することで、「ユーザーが実際に求めている情報」が明確になります。
例えば、「犬 膝 治療方法」というキーワードでの訪問が多い場合、「膝関節治療についてのFAQ」が必要であることが明確になるのです。
4.相談内容の「分類と整理」

ステップ1:全ての相談内容をリストアップ
3~6ヶ月間の相談内容を、すべてリストアップします。
「初診について」「症状判断」「治療方法」「費用」「予防」「ペットの行動」—このように、カテゴリー分けをながらリストアップすることが重要です。
ステップ2:「頻出質問」を特定
リストアップした質問の中から、「月に3回以上」の頻出質問を特定します。
頻出質問こそが、「多くのユーザーが本当に知りたい質問」なのです。
ステップ3:「潜在的ニーズ」を発掘
頻出質問だけでなく、「1~2回しか質問されていないが、重要な質問」も把握することが重要です。
例えば、「ペットが骨を飲み込んでしまった場合、どうしたらいいですか?」という緊急対応についての質問は、頻度は低いかもしれませんが、極めて重要な質問です。
5.相談内容から「FAQ質問」への転換方法
「患者様の言葉」をそのままFAQ質問に
医学的な正確性も重要ですが、「患者様が実際に使う言葉」で質問を表現することが、FAQの効果を最大化するのです。
医学的な表現: 「急性胃腸炎の症状と対応について」
患者様の言葉: 「うちの子が嘔吐と下痢をしています。すぐに来院すべきですか?」
後者のように「患者様の言葉」で質問を表現することで、ユーザーは「あ、これは私の質問と同じだ」と認識しやすくなるのです。
複数の質問を「1つの大きなテーマ」に統合
相談内容を分析すると、「細かい質問が複数あるが、本質的には1つのテーマ」という状況が見られます。
例えば、以下の複数の質問が、実は「予防接種」というテーマの下にあります。
「何歳から予防接種が必要ですか?」 「予防接種を受けるまでの流れを教えてください」 「予防接種の副反応はありますか?」 「予防接種後に遊んでもいいですか?」
これらの質問を「予防接種についての総合ガイド」という1つのテーマにまとめることで、ユーザーの疑問が全て解決されるのです。
6.FAQ回答の「わかりやすさ」工夫
「短い回答」と「詳しい説明へのリンク」の組み合わせ
FAQの回答は、「簡潔性」と「詳細性」の両立が必要です。
簡潔な回答: 「嘔吐と下痢が続く場合は、脱水症状が進む前に、当日中のご来院をお勧めします。」
詳しい説明へのリンク: 「詳しくは、『嘔吐・下痢についてのガイド』をご参照ください。」
このように「簡潔な回答」で即座に不安を軽減しながら、「詳しい説明」へのリンクで、さらに知りたいユーザーに対応するのです。
「イエス・ノー」の明確化
医学的には複雑で、「それは症状によって異なる」という回答になる場合も多いです。
しかし、FAQでは「まずは来院してください」「自宅で様子を見ても大丈夫です」というような「イエス・ノー」を明確にすることが、ユーザーの判断を助けるのです。
7.FAQ から「ブログ記事」への展開
「頻出FAQ」を「ブログ記事」に拡大
最も多く寄せられるFAQから、詳細なブログ記事を制作することが効果的です。
例えば、「予防接種についてのFAQ」が月間50件の相談を受ける場合、このテーマについて、3,000~4,000字の詳細ブログ記事を作成することで、Google検索からのアクセスも増加し、患者様の満足度も向上します。
「季節別FAQ記事」の制作
相談内容は季節により変化します。
冬場は「嘔吐・下痢」についての質問が増え、春場は「ノミ・ダニ対策」についての質問が増えます。
このような「季節別の傾向」に基づいて、季節ごとの「ブログ記事」を前もって制作することで、ユーザーの検索ニーズに対応できるのです。
8.定期的なFAQ更新と改善
月ごとの「質問内容の集計」と「FAQ追加」
毎月、新しく寄せられた質問を集計し、「新しいFAQを追加する必要があるか」を検討することが重要です。
例えば、ある新しい症状についての質問が「この月から増え始めた」場合、その症状についてのFAQをすぐに追加することで、翌月以降、ユーザーの不安を事前に軽減できるのです。
「不人気なFAQ」の削除と改善
FAQのアクセス数を測定することで、「どのFAQが見られているのか」が明確になります。
ほとんど見られていないFAQについては、「質問の表現方法が悪いのか」「そもそもユーザーが求めていない質問なのか」を検討し、改善または削除することが重要です。
ユーザーからのフィードバック「このFAQは役に立ちましたか?」
FAQの各項目の下に「このFAQは役に立ちましたか?」というフィードバック機能を付けることで、「実際にユーザーがどのFAQを有用だと感じているのか」が明確になります。
9.ユーザー満足度の測定
###「FAQ経由で問題解決したか」の追跡
ホームページから来院した患者様に対して「どのページを参考にして来院を決めたか」という「アンケート」を実施することで、「FAQが実際に患者様の判断に影響したのか」が明確になります。
Google Analytics での「FAQページの滞在時間」分析
FAQページの平均滞在時間が「長い」場合、ユーザーがFAQを「じっくり読んでいる」という証拠です。
一方、「短い」場合は「欲しい情報がなかったため、すぐに離脱した」可能性があります。
10.実例:FAQページ改善による相談数増加

事例:「顧客の声」から導き出したFAQで月間相談が35件から82件へ
ある動物病院のFAQページは、「基本的な質問」(初診方法、営業時間、予約方法など)のみで、「医学的な質問」がほぼ含まれていませんでした。
結果として、FAQページの訪問者は少なく、医学的な疑問を持つユーザーは、別の医院のホームページに流れていました。
改善前の状況
- FAQページ月間訪問者:120件
- FAQ経由の相談件数:月間5~10件
- ユーザーの「欲しい質問がない」評価:60%
- ホームページ初診患者の「FAQ参照」率:5%
実施した改善
- 3ヶ月間の電話相談・メール問い合わせを全記録
- 相談内容を「症状」「治療」「予防」「緊急対応」に分類
- 「月3回以上」の頻出質問を特定(30項目)
- 「患者様の言葉」でFAQ質問を再表現
- 関連する複数の質問を「1つのテーマ」に統合
- 簡潔な回答 + 詳しい説明へのリンク構成
- 頻出FAQ 10項目について詳細ブログ記事を制作
- 月ごとのFAQ更新体制を構築
- 「このFAQは役に立ちましたか?」機能を追加
改善結果
改善から3ヶ月後、FAQページのアクセスと相談件数が大幅に増加しました。
| 指標 | 改善前 | 改善後 | 変化 |
| FAQページ月間訪問者 | 120件 | 380件 | +217% |
| FAQ経由の相談件数 | 5~10件 | 35~45件 | +400% |
| ユーザーの「有用性」評価 | 20% | 78% | +58ポイント |
| ホームページ初診患者の「FAQ参照」率 | 5% | 18% | +13ポイント |
特に、「症状判断」「緊急対応」についてのFAQ は、月間200件以上のアクセスを記録し、医院の「相談窓口」としての役割を大幅に強化しました。
まとめ
FAQページは、「医院側が想定した質問」より「実際の患者様の質問」を優先することで、初めてその価値を発揮するのです。
電話相談、メール問い合わせ、来院患者様との会話、Google検索キーワード—これらすべての情報源から「顧客の声」を集め、それを「組織化されたコンテンツ」に転換することで、FAQページは最強のユーザーサポートツールへと進化するのです。
FAQページ改善の要点
- 電話相談での「質問メモ」記録
- メール問い合わせの定期分析
- 来院患者様の「意見交換」
- Google Analytics での検索キーワード分析
- 相談内容の「分類と整理」
- 「月3回以上」の頻出質問を特定
- 「患者様の言葉」で質問を再表現
- 関連質問を「1つのテーマ」に統合
- 簡潔な回答 + 詳しい説明へのリンク
- 頻出FAQから「ブログ記事」に展開
- 月ごとのFAQ更新体制構築
- ユーザーフィードバック機能追加
「顧客の声」から導き出したFAQは、単なる「質問集」ではなく、「患者様の不安を軽減し、来院判断を支援する、最強のマーケティングツール」へと進化するのです。
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