既存患者様のリピート率を上げるホームページ施策5つ メルマガ、LINE、定期検診案内など統合的アプローチ

「新患を獲得することは大切だけど、実は既存患者様を失っていることに気づいていない」

多くの動物病院は、新規患者獲得に注力しますが、同時に既存患者様が「自然に来院しなくなる」という課題を抱えています。初診で来た患者様が、2回目の来院につながらない。2回来た患者様が、その後継続来院しない。この「ドリップアウト」の現象が、動物病院の経営を圧迫するのです。

実は、既存患者様を「継続来院」に導くことは、新規患者を獲得するより遥かに費用対効果が高いのです。既に医師と関係ができている患者様に対しては、「定期検診のお知らせ」「ワクチン接種時期の案内」といった「タイムリーな情報」が、来院動機を生み出します。

ホームページは、単なる「新患獲得のための広告ツール」ではなく、「既存患者様との継続的なコミュニケーション」を実現する極めて重要なプラットフォームなのです。

本記事では、ホームページを活用して、既存患者様のリピート率を上げるための「5つの施策」を、統合的アプローチとして解説します。

目次

  1. リピート率低下の原因を知ることから始まる
  2. 施策1:LINE公式アカウントによる「タイムリーなアラート」
  3. 施策2:メルマガによる「継続的な教育と信頼構築」
  4. 施策3:定期検診案内システムの自動化
  5. 施策4:会員ページで「患者様固有の情報」を提供
  6. 施策5:SNSと連動した「継続的なエンゲージメント」
  7. これら5つの施策の統合的実装
  8. まとめ

 

1.リピート率低下の原因を知ることから始まる

既存患者

様が来院しなくなる3つの理由

ホームページ施策を立案する前に、「なぜ患者様は来院しなくなるのか」という根本的な問題を理解する必要があります。

理由1:「来院のきっかけを失う」

初診時は「ペットの症状や検査」というきっかけがあります。しかし、その症状が改善した後、飼い主様は「次に来院すべき理由」を失ってしまうのです。

ワクチンが来月必要だとしても、飼い主様がそれを記憶していなければ、来院しません。「定期検診が必要」だと知っていても、「具体的にいつ受ければいいのか」の情報がなければ、行動に移しません。

理由2:「動物病院との関係が薄れる」

初診直後は、医師や病院スタッフとのやり取りが多くあります。しかし、その後のコミュニケーションがなければ、患者様の中で「その病院」の存在感が薄れていきます。

「〇〇病院は信頼できる病院だったな」という記憶は、継続的なコミュニケーションがなければ、やがて忘れられるのです。

理由3:「他の医療機関に流れてしまう」

患者様がペットの新しい症状に直面した時、「どこの病院に行けばいいか」を改めて考えます。その時、別の病院が「より手厚い情報提供」をしていたり、「アクセスが良い」という理由で、患者様は流出してしまうのです。

リピート率の現実的な目標値

まず、「どのくらいのリピート率が理想か」を理解することが重要です。

【動物病院のリピート率の目安】

 

初診から1回目の再診までの到達率:40~50%

└─ つまり、初診患者の約半数が来院しない

 

初診から3ヶ月以内に複数回来院する率:30~40%

└─ 継続的な関係が形成できている患者様

 

初診から1年後の継続来院率:20~30%

└─ 定期的な来院習慣が定着している患者様

 

理想的な目標値:

初診から3ヶ月以内に60~70%の再診到達率

初診から1年後に50~60%の継続来院率

これらの数字から見えることは、多くの初診患者が「来院の動機がなくなるまま、そのまま離れていく」という現実です。

 

2.施策1:LINE公式アカウントによる「タイムリーなアラート」

LINEが持つ力:「即座性」と「高開封率」

LINE公式アカウントは、メールやホームページと比べて、極めて高い開封率を持ちます。多くの人がLINEをリアルタイムで確認するからです。

動物病院がLINE公式アカウントを活用する場合、その利点は「タイムリーな情報提供」にあります。

LINEの活用パターン1:ワクチン接種時期のアラート

患者様が初診時にペットの生年月日を登録した場合、そのデータに基づいて「ワクチンの時期が来ました」というメッセージを自動配信することができます。

【LINEアラートの例】

 

「いつもお世話になっております。

〇〇ちゃんのワクチン接種時期がまいりました。

 

前回接種:2024年7月15日

推奨接種時期:2025年7月15日

 

お手数ですが、診察予約をお願いいたします。

予約はこちら:[リンク]」

このメッセージが「タイミング良く」送信されることで、飼い主様の「来院忘れ」が解消され、自然な来院が促進されるのです。

LINEの活用パターン2:診察予約の確認とリマインダー

患者様がホームページから予約を入れた場合、予約確認メールとしてLINEメッセージを送信することも効果的です。さらに「予約日の前日」に「明日の予約のお時間は○時です」というリマインダーを送信することで、予約の無断キャンセルを削減できます。

LINEの活用パターン3:緊急情報の周知

悪天候での臨時休診、システムトラブルによる診察時間変更、感染症の注意喚起など、「緊急の情報」をLINEで速やかに通知することができます。

ホームページだけでは「患者様が気づかない」可能性がありますが、LINEなら「通知が来るので、必ず目に入る」という特徴があります。

LINEを活用する際の注意点

LINEで過度に頻繁にメッセージを送信することは、患者様が「ブロック」する原因になります。理想的には「週1~2回程度」の配信頻度が適切です。

また、LINEメッセージは「短く、行動を促すもの」に限定することが重要です。長い説明文は、LINEには不向きです。詳細な情報はメルマガやホームページに記載し、LINEはそれへの「導線」として機能させます。

 

3. 施策2:メルマガによる「継続的な教育と信頼構築」

メルマガとLINEの役割分担

LINEが「即座性のある短い通知」であれば、メルマガは「継続的な教育と信頼構築」を担当します。

メルマガは「読み応えのある内容」「患者様の知識を高める内容」を提供することが特徴です。一度読まれなくても、ホームページのメルマガアーカイブに保存されるため、患者様が後から参照できるメリットもあります。

メルマガの配信テーマ例

【初心者向けテーマ】

 

Week 1:「新しくペットを迎えた方へ:最初の1ヶ月の準備」

└─ 新患患者様向け

 

Week 2:「ワクチンの副反応と対応方法」

└─ ワクチン接種後の不安を解消

 

Week 3:「ペット保険の選び方と経済的準備」

└─ 予防医療の重要性を啓発

 

【シーズナルテーマ】

 

Spring:「春の季節病:ノミ・ダニ予防の重要性」

└─ 季節ごとの予防医療の重要性

 

Summer:「熱中症と脱水への注意」

└─ 飼い主様の危機感を高める

 

Fall:「高齢ペットの健康診断の必要性」

└─ シニア期への準備を促す

 

Winter:「冬の感染症対策」

└─ 衛生管理の意識を高める

 

【トラブル対応テーマ】

 

「よくある皮膚病と対処方法」

「歯周病が全身に及ぼす影響」

「肥満ペットの健康リスク」

これらのテーマを「定期的に」配信することで、患者様の中で「この病院は、常に健康情報を発信している信頼できる医療機関」という認識が形成されるのです。

メルマガの到達率を高める工夫

メルマガが「迷惑メールフォルダ」に入ると、患者様は読まなくなります。これを防ぐために、初診時に「メルマガの重要性」を説明し、「必ず『受信フォルダ』に登録してください」と指示することが重要です。

同時に、メルマガの最初に「このメールが見づらい場合は、こちらをクリック」というホームページへのリンクを貼ることで、テキスト表示の崩れに対応できます。

4. 施策3:定期検診案内システムの自動化

定期検診案内の重要性

ペット医療における「定期検診」は、人間の健康診断と異なり、明確に「どのくらいの頻度で受けるべきか」が飼い主様に認識されていません。

動物病院から見れば、特に「シニア期のペット」に対しては「年2回の検診」が推奨されるべきですが、飼い主様は「症状がなければ来院しない」という判断をしてしまいます。

定期検診案内システムを自動化することで、この「来院忘れ」と「必要性の認識不足」を同時に解消できるのです。

定期検診案内システムの実装方法

【ホームページ上での自動案内システムの流れ】

 

初診時に患者様データを入力

└─ ペット名、生年月日、診察内容など

 

医師が「次の定期検診時期」を記入

└─ 「3ヶ月後」「6ヶ月後」「1年後」など

 

その時期が来ると、システムが自動的にメール・LINE通知

└─ 「〇〇ちゃんの定期検診時期がまいりました」

 

患者様がホームページから予約

└─ 来院につながる

このシステムを実装することで、医療スタッフが「患者様に電話で案内する手間」が削減され、同時に患者様の来院忘れが防止されるのです。

定期検診案内の「パーソナライズ」の重要性

定期検診案内は「全患者に同じ内容」ではなく、ペットの年齢や健康状態に応じてカスタマイズされるべきです。

【年齢別の定期検診案内の例】

 

若い成犬・成猫(1~7歳):

「年1回の健康診断をお勧めしています」

 

高齢ペット(7歳以上):

「年2回の定期検診により、早期発見が可能になります」

 

既往症のあるペット:

「〇〇の定期的なチェックが重要です。

3ヶ月ごとの検診をお勧めします」

このようなパーソナライズにより、飼い主様は「自分のペットにとって必要な検診」として認識し、来院の動機が高まるのです。

 

5.施策4:会員ページで「患者様固有の情報」を提供

会員ページの目的と機能

ホームページの「会員ページ」(患者様がログインして見られるエリア)を設計することで、患者様に対して「個別対応」が可能になります。

会員ページには、以下の情報が表示されるべきです。

患者様の診察履歴の記録

過去の診察内容、投薬内容、検査結果がすべて記載されます。飼い主様は「前回はどんな症状で、何を投薬された?」という情報を後から確認できるようになります。

処方薬の再発注機能

慢性疾患で継続的に投薬されているペットの場合、「今月も投薬が必要」と認識するのに手間がかかります。会員ページに「薬の再発注ボタン」があれば、飼い主様は簡単に「来月の投薬継続」の意向を示すことができます。

これが「来院のきっかけ」になるのです。

ペット固有の健康管理情報

ペットの体重推移グラフ、ワクチン接種履歴、フィラリア予防の実施状況など、「一元化された健康情報」が会員ページに表示されます。

飼い主様は「このペットの健康状態を、病院がこんなに詳細に管理してくれているんだ」という安心感を得られるのです。

医師からのパーソナルメッセージ

初診時や重要な診察の後、医師が「このペットについて、気をつけるべきポイント」をメッセージとして会員ページに記載することができます。

「〇〇ちゃんは、△△の傾向があるので、□□に気をつけてください」というメッセージは、飼い主様の「信頼」を大幅に高めるのです。

会員ページのセキュリティと更新の重要性

会員ページには患者様の個人情報が含まれるため、セキュリティが極めて重要です。SSL暗号化、パスワード保護など、基本的なセキュリティ対策は必須です。

同時に、会員ページの「最新性」も重要です。診察から数日後に情報が更新されない会員ページは、患者様にとって「役に立たない」ツールに成り下がってしまいます。

 

6. 施策5:SNSと連動した「継続的なエンゲージメント」

SNS(Facebook、Instagram)の役割

SNSは、LINEやメルマガとは異なり、「患者様が『能動的に』情報を探しに来る」プラットフォームです。そのため、SNSに投稿する内容は、患者様が「見たい」と思うコンテンツであるべきです。

SNS投稿の具体的なテーマ

医療事例の「ビフォーアフター」

「この子は来院時は元気がありませんでしたが、診察と治療により、このように回復しました」というビジュアルストーリーは、SNSで高い「いいね」を獲得しやすいです。

ただし、患者様のプライバシー保護のため「顔写真の匿名化」「詳細な患者情報の非開示」が重要です。

季節ごとの健康情報

「春のノミ・ダニ予防について」「夏の熱中症対策」といったテーマを「Instagram のストーリーズ」や「Facebook の投稿」で定期的に配信することで、患者様の「健康意識」が高まり、来院動機が促進されるのです。

スタッフの日常や医療チームの紹介

「医療スタッフの顔が見える」ことで、患者様の中で「この病院は信頼できる人たちが集まっている」という認識が形成されます。

完全な業務関連投稿ばかりではなく「院内の風景」「スタッフの笑顔」といった「人間らしい」コンテンツを混ぜることで、SNSのフォロワーは増加しやすくなります。

SNS投稿と他の施策の連動

SNSで「新しい健康情報」を投稿した時、それと同じ内容を「メルマガの深掘り記事」として配信することで、相互補完的に患者様の教育が進みます。

例えば、Instagramで「ノミ・ダニ予防」の簡潔な投稿をした2日後に、メルマガで「ノミ・ダニ予防について、詳しく解説」という記事を配信する流れが、効果的です。

 

7.これら5つの施策の統合的実装

統合的アプローチの設計図

【5つの施策の統合的な流れ】

 

初診患者様

会員ページへの登録とセットアップ

LINE公式アカウントへの登録案内

メルマガの購読案内

1ヶ月目:

– メルマガで基本知識を教育

– SNSで季節情報を発信

– LINEで定期情報をアラート

2ヶ月目:

– 定期検診時期が来ると、LINEとメルマガで案内

– 会員ページで診察履歴の確認

3ヶ月目以降:

– 継続的なLINEアラート

– 月1回のメルマガ配信

– SNS での日常情報の発信

結果:

年間の継続来院率が60~70%へ上昇

実装時の優先順位

すべての施策を同時に実装することは、現実的ではありません。優先順位は以下の通りです。

【実装の優先順位】

 

段階1(最初の1ヶ月):

– LINE公式アカウントの構築

– 定期検診案内システムの自動化

これら2つで「タイムリーな来院アラート」を実現

 

段階2(次の1ヶ月):

– メルマガシステムの構築

– 会員ページの設計・実装

継続的な教育と個別対応を開始

 

段階3(その後の継続):

– SNS投稿の定期化

– 各施策の相互連動の最適化

この段階的な実装により、各機能が確実に定着してから、次のステップに進むことができます。

実装時の「コスト」と「リターン」

【各施策の実装コスト(参考値)】

 

LINE公式アカウント:月額5,000~15,000円

メルマガシステム:月額3,000~10,000円

会員ページ:初期構築20~50万円、月額5,000~10,000円

SNS管理ツール:月額3,000~8,000円

 

合計:初期構築20~50万円 + 月額15,000~50,000円

 

【期待される効果】

 

初診患者の再診到達率:50%→70%へ上昇

継続来院患者数:20%増加

年間患者数(患者さんあたりの来院回数):30%増加

 

結果:年間売上が1,000万円規模の医院で200~300万円の増収

投資コストと比較して、リターンは極めて高いのです。

 

8.まとめ

既存患者様のリピート率向上の本質

既存患者様のリピート率を上げることは「患者様に情報と価値を継続的に提供する」ことに他なりません。

LINEで「来院のタイミング」を提示し、メルマガで「健康の知識」を提供し、会員ページで「個別対応」を示し、SNSで「信頼感」を生み出す。これら5つの施策が統合的に動くことで、患者様は「このクリニックとの関係を続けたい」という気持ちになるのです。

ホームページはもう「広告ツール」ではない

新規患者獲得のためだけのホームページは、既に過去のものです。最新の動物病院ホームページは「既存患者様とのコミュニケーションプラットフォーム」として機能する必要があります。

このプラットフォームを活用することで、初診患者から「継続的に来院する患者様」への転換が可能になるのです。

「長期的な関係」が、動物病院の経営安定化へ

新規患者を追い求めるマーケティングと、既存患者を大切にするマーケティング。どちらが「持続的な経営」をもたらすのかは、明らかです。

既存患者様との「長期的な信頼関係」が、動物病院の経営安定化と成長の基盤になるのです。


本記事を参考に

動物病院経営ラボでは、既存患者様のリピート率向上に関する、

LINE公式アカウント構築と運用戦略 メルマガシステムの構築とコンテンツ企画 定期検診案内システムの設計・実装 会員ページの企画・設計・実装 SNS戦略の企画と投稿スケジュール管理 各施策の統合的マネジメント 月単位での効果測定とレポート

などの総合的なサポートを提供いたします。

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