ペットホテル・トリミングサービスの紹介術 診療以外のサービスで収益拡大する方法

目次
1. はじめに
2. 診療外サービスの重要性と市場性
3. ペットホテルサービスの魅力的な紹介方法
4. トリミングサービスの紹介戦略
5. Webサイトでの効果的な訴求
6. メールマガジン・SNSでの情報発信
7. 院内での接客時の紹介テクニック
8. 顧客満足度を高めるための工夫
9. 料金体系と競争力の構築
10. まとめ


はじめに

多くの動物病院は、診療収入に依存しています。しかし、診療だけに頼る経営は、季節変動や来院数の減少に大きく影響を受けやすいものです。その一方で、ペットホテルやトリミングなどの附帯サービスは、安定した収入源となり、既存の飼い主様との関係をさらに深めるチャンスにもなります。

本記事では、動物病院が提供するペットホテルとトリミングのサービスを、飼い主様に効果的に紹介し、利用促進につなげるための具体的な戦略をご紹介します。適切な紹介戦略により、診療収入に加えて月額5万~30万円程度の追加収入を実現できた事例も多数あります。

 

診療外サービスの重要性と市場性

動物病院の経営における診療外サービスの位置付け

診療収入と診療外収入のバランス

一般的な動物病院の経営では、全売上の80~90%が診療収入です。しかし、経営が安定している動物病院の多くは、診療外サービスが15~25%程度を占めています。この差が、経営の安定性と利益率の大きな違いになるのです。

診療外収入が高い動物病院の特徴:

  • 売上変動が少なく、安定している
  • 飼い主様の満足度が高く、リピート率が向上する
  • スタッフのスキル向上と士気が高まる
  • 獣医師の診療時間が効率化され、診療品質が向上する

ペットホテルとトリミング市場の規模と成長性

市場規模の実態

日本のペット関連市場は約1兆5,000億円で、その中でペットホテル・トリミング市場は約500億~700億円と推定されています。特に都市部では、飼い主様の「ペットにお金をかけたい」という意識が高く、高単価のサービスに対する需要があります。

供給不足の現状

一方、全国の動物病院のうち、ペットホテルサービスを提供している病院は約30~40%、トリミングサービスを提供している病院は約20~25%程度に留まっています。つまり、多くの動物病院が、この成長市場の機会を逃しているのです。

GWや年末年始などの繁忙期における市場機会

特にGW、お盆、年末年始など、飼い主様が旅行に出かける時期は、ペットホテルの需要が集中します。この時期に、「うちの動物病院でペットをお預けください」というメッセージを届けることで、大きな収入機会を得ることができます。

飼い主様の潜在ニーズ

ペットホテル利用の主な理由

飼い主様が動物病院のペットホテルを選ぶ理由:

  • 医療体制が整っており、緊急時に安心
  • スタッフが動物の扱いに慣れている
  • 診療記録があるため、健康状態をよく理解している
  • 清潔感があり、信頼できる環境
  • 他のペットホテル(ペットショップなど)よりも病気への対応が充実している

トリミングサービス利用の主な理由

飼い主様が動物病院のトリミングを選ぶ理由:

  • 獣医師がいるため、皮膚病などの問題が見つかった時に対応できる
  • 病気を持つペットや高齢ペットでも安心
  • 診療記録に基づいたカウンセリングが受けられる
  • 予防接種などを同時に受けられる

 

ペットホテルサービスの魅力的な紹介方法

ペットホテルの利点の分かりやすい整理

飼い主様視点での「安心」を全面に出す

ペットホテル選びにおいて、飼い主様が最も重視するポイントは「安心」です。単に「お預かりします」ではなく、「獣医師がいるから、もしもの時も対応できます」という安心感を伝えることが極めて重要です。

紹介の核となるメッセージ:

「GWや夏休み、年末年始に旅行をお考えですか?動物病院のペットホテルなら、獣医師とスタッフが24時間体制でお預けしたペットを見守ります。既に診療で健康状態を把握しているため、高齢ペットや持病のあるペットでも、他の施設より安心です。」

他のペットホテルとの差別化ポイント

動物病院のペットホテルが競合(一般的なペットホテル、ペットシッターサービス)に勝つポイントを明確にしましょう:

ポイント 一般的なペットホテル 動物病院のペットホテル
獣医師の常駐 ない場合が多い あり
緊急時の対応 判断が難しい 即座に診療可能
健康情報の把握 ほぼなし 診療情報から把握
健康管理 基本的なケアのみ 投薬管理など対応可
信頼性 評判に依存 獣医師免許による信頼
費用 1泊2,000~5,000円 1泊3,000~8,000円(高めでも納得)

ペットホテル利用の「ビフォーアフター」を示す

飼い主様の心理移動を言語化することで、より強い訴求力が生まれます。

ビフォーの状態:「旅行に行きたいけど、ペットをどこに預けるか心配。ペットショップのペットホテルは衛生面が不安。親戚に預けても、何かあったら申し訳ない。」

アフターの状態:「動物病院に預けるから、もしもの時も安心。獣医師がいるから、突然の病気にも対応してくれる。安心して旅行を楽しめた。」

ペットホテルの設備と環境のアピール

 

清潔感と安全性を視覚的に伝える

Webサイトやメールマガジンでは、ペットホテルの様子を写真や動画で紹介することが非常に効果的です。

紹介すべき項目:

  • ケージの個別性:各ペットが個別のスペースにいることを示す写真
  • 温度管理:冷暖房が完備されていることの説明と写真
  • 清潔性:床、壁、トイレの清掃状況を示す写真
  • スタッフの対応:スタッフがペットと遊ぶ様子や、丁寧に対応している様子
  • 食事管理:ペットの好物やアレルギーに対応している様子

安全管理体制の説明

飼い主様は「ペット同士のトラブル」「脱走」「事故」を心配しています。これらへの対策を明確に伝えることが重要です。

紹介例:「当院のペットホテルでは、性格や体格に合わせて、個別のスペースを用意しています。攻撃性のあるペット、臆病なペット、高齢ペットなど、それぞれのニーズに合わせた環境を整備しており、ペット間のトラブルを最小限に抑えています。」

ペットホテル利用時の「ルーティン」を示す

飼い主様にとって、「預ける時はどうするのか」「預けた後はどうなるのか」「受け取る時は」という一連の流れが不透明だと、利用をためらいます。これらを「段階的」に説明することで、不安が軽減されます。

ペットホテル利用のステップ

ステップ1:事前相談(1週間前~)

  • 飼い主様とカウンセリングを実施
  • ペットの健康状態、食事内容、服用薬の確認
  • ペットの習癖や注意点の聞き取り
  • 料金見積もりの提示

ステップ2:預け当日

  • 詳細な情報フォームへの記入
  • ペットの最終確認
  • 飼い主様からのお預け物(食事、おもちゃなど)の受け取り

ステップ3:お預け期間中

  • 定期的な様子を写真や動画で飼い主様にメール配信(1日1回程度)
  • スタッフによる遊び、散歩、食事管理
  • 健康状態に変化があれば、即座に飼い主様に連絡

ステップ4:受け取り当日

  • 預かり期間中の様子をレポートで説明
  • ペットの状態確認、健康チェック
  • 料金精算

このプロセスを飼い主様に事前に説明することで、「ここなら安心」という感覚が形成されます。

 

トリミングサービスの紹介戦略

トリミングサービスが提供する価値の明確化

単なる「毛をカットする」ではなく、「健康と美を提供する」という位置付け

トリミングを「見た目を美しくするサービス」として捉える飼い主様が多いですが、実は皮膚健康管理の重要な機会です。この視点をシフトさせることで、サービス価値が大きく向上します。

紹介の核となるメッセージ:

「トリミングは、毛を整えるだけではありません。皮膚疾患の早期発見、ノミダニ予防、耳や爪の健康確認など、総合的なヘルスケアの機会です。動物病院のトリミングなら、皮膚病が見つかった時に即座に診療につなげることができます。」

トリミングと診療の連携による付加価値

動物病院でトリミングを提供する最大の利点は、「診療と連携できる」ことです。この連携を強調することで、競合との差別化が実現します。

シナリオ例:

  • 飼い主様:「このペット、最近痒がっているような気がします」
  • トリマー:「では、トリミング中に皮膚をよく観察します」
  • トリミング中に皮膚病の兆候を発見
  • トリマーから獣医師に情報共有
  • 診療で確定診断と治療
  • 飼い主様に結果報告

このような連携が実現できるのは、動物病院ならではです。

トリミング対象ペットの適切な紹介

全ての犬猫がトリミング対象ではないことを説明

特に「高齢ペット」「持病のあるペット」「初めてのトリミング」などの場合、飼い主様は不安を感じています。この不安を払拭する情報提供が重要です。

トリミング対応のポイント整理:

高齢ペットの場合:

  • 若いペットより時間がかかる可能性があることを事前説明
  • 疲れやすいため、短時間での対応
  • スタッフが扱いに注意を払うことを強調
  • 事前に健康診断を受けることをお勧め

持病のあるペットの場合:

  • 獣医師の診療を受けた上で、トリミング可否の判断
  • 投薬状況や健康状態を確認した上でのトリミング計画
  • トリミング中の健康管理の徹底

初めてのペットの場合:

  • 短時間での「お試しトリミング」オプション
  • 飼い主様が同室で様子を見守れる環境の提供
  • スタッフの穏やかで丁寧な対応

トリミング内容のメニュー化と説明

分かりやすいメニュー設定

一般的には「シャンプーコース」「カットコース」「フルグルーミング」などと区分しますが、より詳細な説明があると、飼い主様が自分のペットに必要なサービスを判断しやすくなります。

推奨メニュー例:

基本シャンプーコース(3,000~4,000円)

  • 内容:シャンプー、すすぎ、乾燥、爪切り
  • 対象:月1~2回のメンテナンス希望者
  • 所要時間:1時間~1.5時間

スタンダードグルーミング(5,000~7,000円)

  • 内容:シャンプー、カット、爪切り、耳掃除、肛門絞り
  • 対象:定期的なケアを求める飼い主様
  • 所要時間:2時間~3時間

プレミアムグルーミング(8,000~12,000円)

  • 内容:上記に加えて、歯磨き、肉球ケア、アロマテラピー
  • 対象:愛犬のために最高級のケアを希望
  • 所要時間:3時間~4時間

皮膚ケアスペシャル(6,000~9,000円)

  • 内容:薬浴、マッサージ、保湿トリートメント
  • 対象:皮膚が敏感なペット、皮膚病を持つペット
  • 所要時間:2.5時間~3.5時間

各メニューの説明には、「このペットに適したコースは?」という相談を促すメッセージを付けることで、飼い主様の決定がしやすくなります。

季節別トリミング推奨の提案

季節変化に合わせたトリミング提案も有効です。

春:「新しい季節に向けて、冬毛をすっきりリフレッシュ。春は皮膚病の季節でもあります。皮膚の状態チェックが重要です」

夏:「熱中症対策のため、短めのカットがお勧めです。ただし、紫外線対策で完全に短くしすぎないことがポイント。獣医師に相談しながら、最適なカット長をご提案します」

秋:「涼しくなる季節。毛のボリュームを保ったスタイルが人気。ただし、秋口は皮膚病が増える季節。定期的なケアが必須です」

冬:「寒冷地では、防寒のため毛を伸ばす選択肢もあります。一方で、室内暖房の影響で皮膚が乾燥しやすい季節。保湿トリートメントがお勧めです」

 

Webサイトでの効果的な訴求

ペットホテル・トリミング専用ページの構成

ファーストビューで「安心」を伝える

トップ画像は、スタッフが笑顔でペットと接する様子を使用します。「ここに預けたら、大切なペットが幸せになるだろう」という感覚を与えることが重要です。

ページ構成案:

セクション1:サービス概要(100字程度) 「動物病院だからこそ、可能な安心のペットホテル・トリミング。獣医師とスタッフが24時間体制で、大切なペットをお世話します。」

セクション2:ペットホテルの特徴(見出し+説明500字程度)

  • 獣医師が常駐
  • 個別対応
  • 健康管理体制
  • 投薬対応

セクション3:トリミングの特徴(見出し+説明500字程度)

  • 皮膚健康チェック
  • 高齢ペット対応
  • 診療と連携
  • 個別カウンセリング

セクション4:利用料金表

  • ペットホテル料金
  • トリミング料金
  • セット割引

セクション5:利用者の声(お客様testimonial)

  • 「初めてでしたが、写真をもらえるので安心」
  • 「皮膚病が見つかって、早期治療できた」
  • 「スタッフの対応が丁寧でした」

セクション6:利用の流れ(ステップ4点~5点)

  • 事前相談
  • 預け当日
  • 預かり期間中
  • 受け取り当日

セクション7:よくある質問(Q&A形式10件程度)

セクション8:予約・お問い合わせフォーム

「Before & After」の効果的な活用

トリミング前後の写真比較

ビジュアル情報は、テキストより何倍も効果的です。トリミング前後の写真を複数掲載することで、サービス品質を訴求できます。

掲載の工夫:

  • 同じ場所、同じ照明で撮影(品質感を出すため)
  • 飼い主様の了承を得た上で、ペット名と簡単なコメント付けで紹介
  • 様々な犬種、様々なスタイルを網羅
  • 「このカット、素敵ですね」と思わせるレベルのクオリティを確保

SEOを意識したコンテンツ作成

検索キーワードを意識した記事の作成

「ペットホテル 東京」「犬 トリミング 安い」「ペットホテル 安心」など、実際に飼い主様が検索するキーワードを意識したコンテンツを作成することで、Webサイトへのアクセスが増加します。

記事テーマ例:

  • 「高齢犬のトリミング、注意点は?」
  • 「初めてのペットホテル、飼い主様が心配なことTOP10」
  • 「皮膚病予防のための定期トリミングの重要性」
  • 「ペットホテルでの投薬管理、どこまで対応?」

これらの記事は、検索上位表示を目指しながら、実用的な情報を飼い主様に提供するものです。

 

メールマガジン・SNSでの情報発信

メールマガジンでの効果的な紹介

季節ごとのアプローチ

メールマガジンは、タイムリーな情報発信の手段です。季節に合わせたペットホテル・トリミング情報を配信することで、飼い主様の関心が高まります。

配信例:

GW前(3月下旬): 件名:「GWの旅行は安心。当院のペットホテルにお任せください」 内容:GW期間中のペットホテル利用について、事前予約の重要性、実際の利用者の感想、料金案内

お盆前(7月下旬): 件名:「夏休みに旅行をお考えの飼い主様へ。ペットホテルの事前予約受付中」 内容:夏場のペットホテルでの熱中症対策、高齢ペットへの対応、料金案内

年末年始前(11月下旬): 件名:「年末年始のペットホテル。早めのご予約がお勧めです」 内容:年末年始期間中の営業状況、予約受け付けの開始、特別キャンペーン情報

トリミング利用促進のメール配信

季節の変わり目でのタイミング

春夏秋冬、季節が変わる時期は、ペットの毛が生え変わる時期でもあります。「今こそ、トリミングのチャンス」というメッセージを届けることが重要です。

配信例(4月中旬): 件名:「春毛への生え変わり時期。今こそ、デトックストリミングがお勧めです」 内容:春の毛の生え変わり、冬毛を落とすことの重要性、皮膚健康チェックの必要性、新しいスタイルご提案、料金案内

高齢ペット向けのトリミングのアプローチ

高齢ペットを持つ飼い主様は、「トリミングってシニアペットに負担があるのではないか」という不安を持っています。この不安を払拭する情報を提供することで、利用を促進できます。

配信例(随時): 件名:「シニアペットのためのトリミング。獣医師がいるから、安全です」 内容:高齢ペットのトリミング時の注意点、動物病院でのトリミングの安心性、獣医師による健康チェック、料金案内、相談の受け付け

SNS(Instagram、Facebook)での視覚的な情報発信

ビジュアルコンテンツの活用

SNSでは、テキストより写真や動画がより多くの反応を生みます。ペットホテルやトリミングの様子を動画で紹介することで、飼い主様の関心が大きく高まります。

投稿内容の例:

Instagram投稿例:

  • ペットホテル中のペットたちの遊ぶ様子(短い動画、10~15秒)
  • トリミング中のビフォーアフター写真
  • スタッフがペットと遊ぶ様子(楽しい雰囲気を伝える)
  • 月ごとのキャンペーン情報
  • 利用者からの感想(引用コメント形式)

投稿頻度の目安:

  • ペットホテル利用がある時期(繁忙期):週2~3回
  • 通常期:週1~2回
  • 閑散期:週1回程度

トリミング・ペットホテルのキャンペーン情報

季節割引キャンペーン

新規利用者を獲得するための割引キャンペーンは、効果的です。ただし、「安かろう悪かろう」と思われないよう、割引理由を明記することが重要です。

キャンペーン例:

「春の新規ペットホテル利用者向けキャンペーン(3月~4月)」

  • 初回利用者:20%割引
  • 理由:「春は旅行シーズン。多くの飼い主様に当院のペットホテルをご体験いただき、安心を実感してもらいたいから」

「シニアペット向けトリミングキャンペーン(通年)」

  • 8歳以上のペット:10%割引
  • 理由:「シニアペットのヘルスケアを支援するため」

これらのキャンペーンは、「お得」という利点だけでなく、「この動物病院は、こういう考え方をしている」というメッセージも同時に伝えるものです。

 

院内での接客時の紹介テクニック

診療の流れの中でのサービス紹介

「タイミング」を意識した紹介

サービス紹介のタイミングは重要です。診療中にペットホテルやトリミングを紹介するのではなく、診療後の「精算時」や「次回予約時」が最適です。

推奨される紹介フロー:

診療が終わった直後:獣医師は診療の終了を告げる

精算時:スタッフが、診療内容を簡潔に説明し、ペットの現在の状態を伝える

その後、自然な流れで:「ところで、GWのご旅行はいかがですか?」

飼い主様の反応を見て:

  • ポジティブな反応 → 「そのような時は、当院のペットホテルをご利用いただけます。ご存知でしたか?」
  • 予定がない、または反応が薄い → 「季節の変わり目ですので、トリミングもお勧めしています。詳しくは、こちらのチラシをご覧ください」

パーソナライズされた提案

ペットの状態に基づいた提案

全ての飼い主様に同じサービスを勧めるのではなく、ペットの状態に基づいてカスタマイズした提案をすることで、説得力が増します。

提案例:

皮膚疾患を持つ犬の飼い主様: 「お疲れ様です。今日のお迎えお疲れ様です。ビート君の皮膚は、現在良好に改善していますが、今の季節は湿度の変化で再発しやすい時期です。当院では、皮膚ケア用の薬浴トリミングも行っているので、月1回程度のケアをお勧めしています。」

高齢ペットの飼い主様: 「そろそろ旅行のシーズンですね。マックス君はシニアですが、当院のペットホテルでしたら、獣医師が常駐しており、もしもの時も安心です。健康管理にも気を配りますので、ぜひご利用ください。」

初めて来院した飼い主様: 「本日は初めてのご来院ありがとうございました。タローちゃんのことは、これからよく把握させていただきます。ところで、予防接種やトリミングのご予定はありますか?当院では、総合的にペットのヘルスケアをサポートしています。」

ペットホテル・トリミング利用者からの口コミを活用

「実例」による信頼構築

飼い主様は、広告よりも「他の飼い主様からの口コミ」に信頼を寄せます。満足度の高いペットホテル・トリミング利用者からの口コミを、院内掲示板やチラシで紹介することで、新規利用者の不安が軽減されます。

掲示板の例:

「GWにペットホテルを利用しました(トイプードル・リリさんの飼い主様)」 「初めてでしたが、毎日写真をメールで送ってくれたので、安心でした。スタッフの皆さんが親切で、帰ってきたリリも楽しかったようです。来年も利用したいです。」

「シニア犬のトリミング(シーズー・ロクロクさんの飼い主様)」 「8歳のロクロクなので、トリミングが負担にならないか心配でした。でも、獣医師さんがいるし、スタッフも優しく扱ってくれたので、大丈夫でした。定期的にお願いしたいと思います。」

「皮膚病が見つかりました(ダックスフンド・ココさんの飼い主様)」 「トリミング中に皮膚の異常が見つかって、獣医師さんにすぐ診てもらえました。おかげで早期発見、早期治療ができました。トリミングと診療が一緒だと本当に安心です。」

これらの口コミは、実名と顔写真(了承得たもの)を付けることで、より説得力が増します。

 

顧客満足度を高めるための工夫

ペットホテル利用時の「サービス品質」向上策

預かり中の定期的なコミュニケーション

飼い主様が最も不安に感じるのは、「ペットが預かられている間、どうしているのか分からない」ということです。定期的に様子を伝えることで、飼い主様の不安が大きく軽減されます。

推奨の対応方法:

1日目:預かり直後

  • 到着直後の様子をメール・写真で報告
  • 「お迎えの時と変わりなく、元気です」というメッセージ

1日目夜:夜間の様子

  • 食事の摂取状況
  • 排便・排尿の状況
  • 夜間の睡眠状況を簡潔に報告

2日目以降:毎日1回

  • その日の活動の様子を動画・写真で送信
  • 「今日はスタッフと30分遊びました」など具体的な内容
  • 健康面での変化があれば、即座に連絡

受け取り当日:帰宅直前

  • 預かり全期間を通じた総括レポートを作成
  • 食事、排泄、睡眠、行動などのまとめ
  • 「お利口さんでした」といった総評

追加サービスの提案

ペットホテル利用者に対して、「オプションサービス」を提案することで、顧客満足度が向上し、同時に追加収入も得られます。

オプションサービス例:

散歩サービス(+500~1,000円/回)

  • 1日1回、スタッフとの散歩
  • 外の刺激を受けることで、ストレス軽減

遊び時間サービス(含まれる場合が多い)

  • スタッフとのマンツーマン遊び時間
  • 30分~1時間程度

マッサージ・リラクゼーション(+1,000~2,000円/回)

  • ペットのストレス軽減を目的とした対応
  • シニアペットに特に人気

特別食対応(含まれる場合が多い)

  • 持参食への対応
  • 手作り食への対応
  • アレルギー対応食への対応

トラブル時の迅速な対応

万が一、ペットホテル中にペットが体調を崩した場合の対応は、飼い主様の信頼を大きく左右します。

推奨手順:

発症直後:

  • 症状を詳しく観察
  • 獣医師に即座に報告
  • 飼い主様に電話で連絡(メールより即座性が重要)
  • 今後の対応について相談

対応中:

  • 状態の変化を記録
  • 飼い主様に定期的に報告(1時間ごと、など)
  • 必要に応じて診療・投薬を実施

回復後:

  • 回復過程を飼い主様に報告
  • 今後の予防策について提案
  • 追加費用が発生した場合は、正当性を明確に説明
  • 「この時対応できてよかった」と飼い主様が感じるような説明

トリミング利用時の「満足度」向上策

トリミング前のカウンセリング

「思っていたスタイルと違った」という不満を防ぐために、トリミング前のカウンセリングが極めて重要です。

カウンセリングの内容:

ペットの現在の毛の状態確認:

  • 毛質、毛量、毛色の確認
  • 前回のトリミングからの期間
  • 毛の絡み、毛玉の有無

飼い主様の希望確認:

  • 仕上がりイメージの確認(写真参照)
  • 「短すぎない」「動きやすく」など具体的な要望の聴取
  • ペットの年齢や体調に基づいた提案

注意点の確認:

  • 皮膚の状態、既往症の確認
  • 敏感な部位があれば、配慮方法の相談
  • 薬の使用、アレルギーの有無

時間と料金の確認:

  • 予想される所要時間
  • 料金(追加料金が発生する可能性があれば、事前に説明)
  • 仕上がりの確認時間

トリミング中の健康観察

トリミングは単なる「毛のケア」ではなく、「ヘルスケア」の機会です。この視点から、健康観察を充実させることが重要です。

観察項目:

皮膚状態:

  • 皮膚の赤み、湿疹の有無
  • フケ、かさぶたの有無
  • 悪臭の有無

耳の健康:

  • 耳垢の量と色
  • 炎症の兆候
  • 異臭の有無

爪の状態:

  • 爪の長さ、割れの有無
  • 肉球の健康状態
  • 爪と肉球の間の汚れ、炎症

歯と口腔:

  • 歯石の付着
  • 口臭の有無
  • 歯茎の赤み、腫れ

全身の健康:

  • リンパ節の腫れ
  • 体重の変化
  • 毛並みの質感

これらの観察結果を記録し、飼い主様に報告することで、「この動物病院のトリミングは、ただきれいにするだけではなく、ペットの健康をチェックしてくれる」という評価につながります。

トリミング後のアフターケアのアドバイス

トリミング後の毛のお手入れ方法をアドバイスすることで、飼い主様の満足度が向上し、次回のリピートにつながります。

アドバイス例:

短毛種の場合: 「トリミング後1~2週間は、週2~3回のブラッシングをお勧めします。毛が短いうちは、毛玉ができにくいですが、皮膚を清潔に保つために重要です。」

長毛種の場合: 「毎日15分~20分のブラッシングをお勧めします。特に雨の日は湿度が高く、毛玉ができやすいので、ご注意ください。」

トリミング直後のケア: 「今日は、シャンプー直後なので、冷えないように注意してください。就寝時は、タオルケットなどで暖かくしてあげてください。」

 

料金体系と競争力の構築

適切な料金設定

市場調査に基づいた料金設定

ペットホテル・トリミングの料金は、「相場と自院の特徴」を勘案して設定することが重要です。相場より大幅に安いと、質の低さを疑われ、大幅に高いと、顧客を失います。

市場調査の方法:

同一地域の動物病院の料金調査:

  • 近隣5~10施設の料金を調査
  • 平均料金を把握
  • 自院の立地、施設、スタッフのレベルと比較

オンライン評価サイトの確認:

  • 料金と顧客評価の相関を確認
  • 「料金は高いが、満足度が高い」施設の特徴を分析
  • 「料金は安いが、低評価」施設の課題を把握

顧客ニーズの調査:

  • 既存顧客にアンケート実施
  • 「いくらなら利用したいか」を直接聞く
  • 「他施設との違いは何か」を確認

推奨料金設定方針:

一般的なペット業界平均より10~20%高めを基準に、「高品質・高安心」の差別化要因を理由として、飼い主様に説明できる料金設定を目指すべきです。

季節変動と需要の最適化

ペットホテルは、季節による需要変動が大きいサービスです。この変動を逆手に取った料金設定が有効です。

料金設定例:

通常期(5月~6月、9月~10月):

  • ペットホテル1泊:5,000円

繁忙期(GW、お盆、年末年始):

  • ペットホテル1泊:6,500円~7,000円
  • 「予約が集中する期間のため」という理由を明記

閑散期(1月、8月):

  • ペットホテル1泊:4,000~4,500円
  • 「利用促進のため、特別割引」

連泊割引:

  • 2泊以上:1泊当たり5%割引
  • 7泊以上:1泊当たり10%割引

付加価値による料金差別化

「高付加価値=高料金」の理論構築

同じペットホテルでも、提供する付加価値によって料金を分けることが有効です。

料金体系案:

スタンダード(基本コース):5,000円/泊

  • 通常のお預かり、食事、散歩1回

プレミアム:7,000円/泊

  • 上記に加えて、マッサージ、追加散歩1回、写真・動画毎日配信

VIP(最高級コース):10,000円/泊

  • 上記に加えて、獣医師の毎日の健康チェック、個別の寝床提供、シャンプー含む

これらのコース分けにより、飼い主様は自分のニーズと予算に合わせてコースを選択でき、同時に、動物病院の立場からは、より高い客単価の実現が可能になります。

トリミング料金の透明性と納得性

「追加料金」を事前に説明する仕組み

トリミング料金でよくあるトラブルは、「毛玉があったため追加料金を請求された」という問題です。これを避けるために、事前説明を徹底することが重要です。

追加料金の例と説明:

毛玉除去料(+1,000~3,000円): 事前説明:「毛玉が多い場合は、丁寧に除去するのに時間がかかるため、追加料金が発生します。当日確認後に、料金をお伝えします。」

皮膚トラブル対応(+500~1,500円): 事前説明:「皮膚に炎症や感染の兆候がある場合は、特別な対応が必要になり、追加料金が発生することがあります。」

爪切りトラブル対応(含まれる場合が多い): 事前説明:「爪が異常に硬い場合や、血管が見えている場合は、特別な対応が必要になることもあります。」

これらの追加料金について、「トリミング利用の流れ」として、チラシやWebサイトに記載することで、事前トラブルの防止が可能になります。

 

まとめ

成功のための3つのポイント

  1. 「安心」を最優先に訴求する

ペットホテルもトリミングも、飼い主様の最大の関心事は「安心」です。単に「サービスを提供します」ではなく、「獣医師がいる、だから安心」「診療記録があるから、ペットのことをよく知っている、だから安心」というメッセージを一貫して伝えることが、競合との最大の差別化になります。

  1. 「視覚的な情報」と「ストーリー」で信頼を構築する

テキストの説明より、写真や動画、そして「実際の利用者の体験談」の方が、何倍も説得力があります。定期的にこれらのコンテンツをWebサイトやSNSで発信することで、見込み客の信頼が形成されます。

  1. 「タイムリーな情報発信」で来院時外のタッチポイントを増やす

診療時以外に、メールマガジンやSNSで定期的に情報を発信することで、ペットホテル・トリミングサービスを思い出させる機会が増えます。特に季節ごとのキャンペーン情報は、「今、利用したい」という心理を生み出す効果があります。

長期的な成長ストーリー

ペットホテルとトリミングサービスの導入・強化により、多くの動物病院が経営の安定化を実現しています。初期段階では、月額5万~10万円程度の追加収入ですが、サービス品質の向上と飼い主様のニーズ把握に努めることで、1~2年後には月額20万~50万円の追加収入が可能になった事例も多数あります。

さらに、ペットホテル・トリミング利用者は、診療の来院頻度も高くなる傾向があります。つまり、これらのサービスは「単なる追加収入」ではなく、「既存顧客の LTV(ライフタイムバリュー)を高める」施策なのです。

実行へのファーストステップ

  1. 現状把握:自院のペットホテル・トリミングサービスの現状を評価(利用者数、満足度など)
  2. 市場調査:同一地域の競合他社のサービス、料金を調査
  3. 改善計画:改善すべき点、強化すべき点をリストアップ
  4. 情報発信計画:月1回のブログ記事作成、月2回のメールマガジン配信など、具体的な発信スケジュールを決定
  5. 実行と改善:3ヶ月~6ヶ月単位で、PDCAサイクルを回す

今、あなたの動物病院が診療収入一本に依存しているのであれば、ペットホテル・トリミングサービスの強化に着手する時期です。飼い主様の潜在的なニーズは高く、市場も成長しています。適切な戦略と実行により、診療以外の収入源は、確実に構築できるのです。