「この病院は経験豊富ですか?」という飼い主様の質問に、多くの動物病院は「はい、○○年の実績があります」と答えます。しかし、この答え方では説得力が足りません。なぜなら、飼い主様にとって重要なのは「病院の歴史」ではなく、「この特定の病気に対して、どれだけの経験があるのか」だからです。
例えば、「当院は30年の実績があります」と「当院は年間50例の椎間板ヘルニア手術を実施しています」では、後者の方が圧倒的に説得力があります。数字が具体的で、かつ患者様の関心事に直結しているからです。
年間の症例数・治療実績を統計的に発表することは、単なる「宣伝」ではなく、飼い主様が最適な医療機関を選ぶための重要な情報提供です。同時に、それは皆様の動物病院の「経験値」と「実績」を最も効果的にアピールする戦略でもあります。
本記事では、症例数・治療実績をいかに統計的に整理し、飼い主様に伝えるのかについて、詳しく解説します。
目次
- 治療実績の数値化がなぜ重要か
- 蓄積すべき統計データの種類
- 統計データの効果的なビジュアル化
- ホームページでの実績発表方法
- 他院との比較を通じた差別化戦略
- 年間実績レポートの作成と発表
- 数字を活用した患者様心理への訴求
- まとめ
1.治療実績の数値化がなぜ重要か

信頼感の構築
「経験豊富です」という曖昧な言葉より、「年間120例の白内障手術の実績があります」という数字が、飼い主様に確かな信頼感を与えます。数字は、客観的事実であり、容易に検証不可能であっても、人間の心には「根拠のある主張」として受け取られます。
医学的な信頼性
症例数が多いことは、医学的な信頼性にも直結します。例えば、医学論文やガイドラインでも「1,000例以上の症例から得られたエビデンス」という記載は、「数例の症例」と比べて、はるかに信頼度が高いのです。
患者様の意思決定支援
特に難しい治療や手術を考えている飼い主様は、「この病院は本当に対応できるのか」という不安を抱いています。年間症例数を示すことで、「この病院はこの治療に慣れている」という確信を与えることができます。
ホームページのSEO評価向上
具体的な数字や実績に基づいたコンテンツは、検索エンジンからも評価されやすく、ホームページの上位表示につながります。
2.蓄積すべき統計データの種類

①診療科別の症例数
動物病院で診療している主な科目ごとの年間症例数を記録します。
記録項目例
| 診療科 | 症例数 | 手術件数 | 新患者数 | 再診患者数 |
| 一般診療 | 1,200 | – | 450 | 750 |
| 外科 | 320 | 320 | 80 | 240 |
| 眼科 | 180 | 85 | 60 | 120 |
| 歯科 | 240 | 180 | 40 | 200 |
| 皮膚科 | 150 | – | 50 | 100 |
| 腫瘍科 | 90 | 40 | 30 | 60 |
| 合計 | 2,180 | 625 | 710 | 1,470 |
②疾患別の治療実績
特に専門性を持つ疾患については、詳細な治療実績を記録します。
記録項目例
| 疾患名 | 症例数 | 手術数 | 治療成功率 | 平均治療期間 |
| 椎間板ヘルニア | 45 | 35 | 92% | 6週間 |
| 白内障 | 38 | 38 | 95% | 8週間 |
| 歯周病 | 120 | 85 | 88% | 4週間 |
| 膀胱結石 | 28 | 28 | 100% | 2週間 |
| 脂肪腫 | 52 | 52 | 100% | 3週間 |
| 皮膚病(アレルギー) | 85 | – | 75% | 12週間 |
③患者様(動物)の属性別分析
年齢、体重、動物の種類などの観点からデータを分析することで、より詳細な情報が得られます。
記録項目例
| 属性 | 症例数 | 割合 |
| 年齢別 | ||
| 0~3歳 | 320 | 14.6% |
| 4~7歳 | 650 | 29.8% |
| 8~12歳 | 780 | 35.7% |
| 13歳以上 | 430 | 19.7% |
| 動物種別 | ||
| 犬 | 1,450 | 66.5% |
| 猫 | 550 | 25.2% |
| ウサギ・その他 | 180 | 8.3% |
| 初診・再診別 | ||
| 新患者 | 710 | 32.5% |
| 再診患者 | 1,470 | 67.5% |
④治療成功率と予後
特に手術を扱う科では、治療成功率や予後に関するデータを記録することで、診療品質の説得力が大きく向上します。
記録項目例
| 手術内容 | 手術数 | 成功率 | 合併症発生率 | 再手術率 |
| 避妊・去勢手術 | 240 | 100% | 0.4% | 0% |
| 腫瘍切除手術 | 65 | 94% | 3.1% | 1.5% |
| 整形外科手術 | 85 | 91% | 5.9% | 2.4% |
| 歯科抜歯 | 140 | 98% | 0.7% | 0% |
3.統計データの効果的なビジュアル化

グラフ①:診療科別症例数の割合
【2024年 診療科別症例数の内訳】
一般診療 ███████████████████████████░ 55.0%(1,200例)
外科 ███████████░░░░░░░░░░░░░░░░░ 14.7%(320例)
歯科 ███████░░░░░░░░░░░░░░░░░░░░░ 11.0%(240例)
眼科 ████░░░░░░░░░░░░░░░░░░░░░░░░ 8.3%(180例)
皮膚科 ███░░░░░░░░░░░░░░░░░░░░░░░░░ 6.9%(150例)
腫瘍科 ██░░░░░░░░░░░░░░░░░░░░░░░░░░ 4.1%(90例)
年間総症例数:2,180例
飼い主様への説明:「当院は一般診療から専門的な手術まで、幅広い治療に対応しています。特に眼科と歯科については、年間200例以上の実績を持つ専門分野です。」
グラフ②:年別の症例数推移(5年間)
【過去5年間の症例数推移】
2020年 █████ 1,450例
2021年 ██████ 1,680例
2022年 ███████ 1,920例
2023年 ████████ 2,050例
2024年 █████████ 2,180例
→ 年平均10.4%の成長
→ 飼い主様からの信頼が年々増加していることの表れ
飼い主様への説明:「年々、多くの飼い主様にご来院いただいており、ご信頼の証として受け止めています。」
グラフ③:年齢別患者数の分布
【患者様(ペット)の年齢分布】
13歳以上(シニア) ██████████ 19.7%(430例)
8~12歳(中高齢) ████████████████ 35.7%(780例)
4~7歳(成人) ███████████ 29.8%(650例)
0~3歳(若年) ███ 14.6%(320例)
→ 高齢動物の治療経験が豊富
→ シニアペットの飼い主様も安心してご来院いただけます
飼い主様への説明:「55.4%の患者様が8歳以上のシニアペットです。高齢動物の治療には特に力を入れており、安全かつ的確な対応が可能です。」
グラフ④:治療成功率の比較
【主要手術の成功率】
避妊・去勢手術 ██████████ 100%
歯科抜歯 █████████░ 98%
膀胱結石摘出 ██████████ 100%
脂肪腫切除 ██████████ 100%
白内障手術 █████████░ 95%
椎間板ヘルニア手術 ██████████░ 92%
腫瘍切除手術 ██████░░░░ 94%
業界平均 █████░░░░░ 85~90%
→ 当院の成功率は業界平均を上回っている
飼い主様への説明:「当院の手術成功率は、業界平均と比較しても高い水準を維持しており、多くの飼い主様にご信頼いただいています。」
グラフ⑤:新患者と再診患者の比率
【患者様の構成比】
新患者患者 ██████░░░░░░░░ 32.5%(710例)
再診患者 ████████████████████░░░ 67.5%(1,470例)
→ 再診患者が67.5%という高い割合
→ 既存患者様からの信頼が厚いことを示している
→ 新患者様も多く、認知度が向上していることを示している
飼い主様への説明:「2人に1人以上が「また来たい」と思ってくださり、継続的にご来院いただいています。これは、飼い主様からの信頼の何よりの証です。」
- ホームページでの実績発表方法
方法①:「診療実績」専用ページの設置
ホームページに「診療実績」または「年間統計情報」という専用ページを設け、上記の統計データを掲載します。
ページのコンテンツ例
【当院の年間診療実績】
◆ 2024年 年間統計報告書
【総合統計】
– 年間来院者数:2,180例
– 新患者様:710例
– 再診患者様:1,470例
– 手術件数:625件
【診療科別統計】
[表で診療科別の症例数を掲載]
【特診療成績】
[疾患別の治療成功率を掲載]
【患者様の属性】
[年齢別、動物種別の分布を掲載]
【5年間の推移】
[グラフで過去5年の成長を表示]このページを設けることで、飼い主様は「この病院は、自分たちの実績を堂々と公開している=診療品質に自信がある」と感じ取ります。
方法②:ホームページトップページへの実績掲載
トップページの「当院について」セクションに、主要な統計数字を表示します。
表示例
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
当院の実績(2024年)
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年間診療数 年間手術数 患者様満足度
2,180例 625件 96%
再診率67.5% | 成功率92~100%
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方法③:PDF形式での「年間実績レポート」配布
ダウンロード可能な「年間実績レポート」を作成し、ホームページから配布します。
レポートの内容例
- 表紙:「2024年度 診療実績報告書」
- 目次
- 総合統計(図表付き)
- 診療科別統計
- 疾患別治療実績
- 患者様満足度調査結果
- 院長からのコメント
このレポートは、初診時に待合室に置いておくこともでき、飼い主様に「この病院は統計的なアプローチをしている=科学的で信頼できる」という印象を与えます。
5.他院との比較を通じた差別化戦略
直接比較ではなく「相対的な優位性」を示す
他院と直接比較することは避けるべきですが、「業界平均」や「一般的な水準」と比較することで、相対的な優位性を示すことができます。
表現例①:成功率
×「○○病院より成功率が高い」(直接比較は避ける)
○「当院の手術成功率95%は、業界平均の85~90%を上回る水準です」
(業界全体との比較)
表現例②:症例数
×「△△病院より症例数が多い」(直接比較は避ける)
○「年間625件の手術実績は、地域内でも有数の件数です」
(地域全体の中での位置づけ)
専門分野での差別化
年間症例数の統計から、特に実績の多い分野を強調することで、専門性をアピールします。
差別化表現の例
「当院は、年間歯科診療が240例で、歯周病治療120例、
抜歯手術85例という豊富な実績を持つ専門動物病院です。
予防歯科から高度な手術まで、幅広い歯科治療に対応できます
6.年間実績レポートの作成と発表

作成のタイミング
毎年1月上旬(前年12月末日の集計完了後)に、前年度の実績をまとめたレポートを作成・発表します。
発表方法の多重化
| 発表方法 | タイミング | 対象 | 効果 |
| ホームページ掲載 | 1月10日 | 全飼い主様 | 新患者獲得、SEO効果 |
| SNS投稿 | 1月10日~15日 | フォロワー | 認知度向上、エンゲージメント |
| 初診患者様への配布 | 通年 | 初診患者様 | 即座の信頼獲得 |
| メールニュースレター | 1月20日 | 既存患者様 | 既存患者様の満足度向上 |
| 院内掲示 | 1月通年 | 来院患者様 | ブランド認知の強化 |
SNS投稿例
🐾【2024年 年間診療実績報告】
昨年は、2,180件のご来院をいただき、625件の手術を実施いたしました。
✓ 年間症例数:2,180例
✓ 年間手術数:625件
✓ 患者様満足度:96%
✓ 再診率:67.5%
このような数字は、皆様の信頼があってこそです。
2025年も、より質の高い医療をお届けするために全力を尽くします。
ご質問・ご不明な点は、お気軽にお問い合わせください。
#動物病院 #医療実績 #患者様信頼 #獣医医療
7.数字を活用した患者様心理への訴求
心理学的な訴求テクニック
①「実績の多さ」による信頼醸成
効果:人間は「多くの人が選んでいる=信頼できる」と無意識に判断します。
「年間2,180例の診療実績」という数字は、
「多くの飼い主様が当院を選んでくださっている」
という信頼のシグナルになります。
②「成功率の高さ」による安心感
効果:具体的な成功率は、飼い主様の不安を大幅に軽減します。
「手術成功率95%」という数字は、
「20件中19件は成功する」という安心感を生み出します。
③「再診率の高さ」による信頼性
効果:再診率が高い=既存患者様からの評価が高い、という判断につながります。
「再診率67.5%」という数字は、
「ほとんどのペットが『また来たい』と思ってくださっている」
ということを意味し、新患者様の信頼につながります。
④「年別推移」による成長感
効果:年々成長している数字は、「この病院は信頼を積み重ねている」というメッセージを与えます。
2020年:1,450例
2021年:1,680例
2022年:1,920例
2023年:2,050例
2024年:2,180例
この推移は、「飼い主様からの信頼が年々増加している」
という強いメッセージになります。
数字の表現方法のコツ
✓ 具体的な数字を使う
×「多くの患者様がご来院いただいています」
○「年間2,180例、昨年比6.3%増の患者様がご来院いただきました」
✓ 「相対的な位置づけ」を示す
×「625件の手術を実施しました」
○「年間625件の手術実績は、地域内でも有数の規模です」
✓ 「患者様にとってのメリット」と結びつける
×「成功率95%です」
○「成功率95%により、飼い主様に高い確率での改善をお約束できます」
8.まとめ
年間の症例数・治療実績を統計的に発表することは、皆様の動物病院の「経験値」と「実績」を最も効果的にアピールする戦略です。
統計的な実績発表の5つのメリット
- 信頼感の構築
- 具体的な数字により、「根拠のある医療機関」という印象を与える
- 専門性の明確化
- 疾患別・診療科別の症例数により、「この分野の専門家」という位置づけが可能
- 患者様の意思決定支援
- 治療成功率や予後データにより、飼い主様が「この治療を受けるべきか」を判断する材料を提供
- SEO効果
- 具体的なデータ・統計情報を含むコンテンツは、検索エンジンからの評価が高い
- 競合との差別化
- 統計的なアプローチ自体が、「科学的で信頼できる医療機関」というイメージを作出
実装ステップ
- データ収集体制の構築
- 診療管理システムで、症例ごとの詳細データを記録
- 統計分析の実施
- 定期的に(年1回)、統計データを集計・分析
- ビジュアル化
- グラフ・表を活用し、わかりやすく可視化
- 多重チャネルでの発信
- ホームページ、SNS、初診資料、メールニュースレターなど
- 継続的な更新
- 毎年1月に新年度データを発表、前年比較を示す
最終的なメッセージ
統計的な実績発表は、単なる「宣伝」ではなく、飼い主様に対する**「透明性のある情報提供」**です。具体的な数字により、飼い主様は「この病院ならペットを安心して預けられる」という確信を得るのです。
本記事を参考に
動物病院経営ラボでは、ホームページ制作時に、このような統計的な実績データを効果的に組み込むお手伝いをいたします。年間症例数の管理体制から、ビジュアル化、発表方法まで、トータルでサポート可能です。
皆様の動物病院の「経験値」と「実績」を、数字により最大限にアピールするための戦略立案・実装をお考えの際は、ぜひお気軽にご相談ください。
