目次
1. なぜ動物病院にアクセス解析が必要なのか
2. Googleアナリティクスで最初に見るべき5つの指標
3. 飼い主さんの行動パターンから改善点を発見する方法
4. ページ別分析で見つかる意外な問題点
5. 集客チャネル分析で効果的な宣伝方法を見極める
6. 目標設定と成果測定の実践的な方法
7. 月次レポートの作り方と改善サイクルの回し方
1.なぜ動物病院にアクセス解析が必要なのか
「ホームページを作ったけど、本当に効果があるの?」多くの院長先生が抱える疑問です。実は、ホームページを持っている動物病院の約70%が、アクセス解析を全く見ていないという調査結果があります。これは、宝の山を放置しているようなものです。
アクセス解析を活用することで、以下のような重要な情報が分かります。
アクセス解析で分かる重要情報
| 分かること | 具体例 | 活用方法 | 
| 来院のきっかけ | 「犬 嘔吐 夜間」で検索→来院 | 緊急対応ページの充実 | 
| 人気のページ | 料金表が最も見られている | 料金情報をより詳しく | 
| 離脱の原因 | トップページで60%が離脱 | トップページの改善 | 
| 来訪者の地域 | 隣町からのアクセスが多い | 隣町への広告強化 | 
| デバイスの種類 | 85%がスマートフォン | スマホ対応の優先 | 
実際にアクセス解析を始めた動物病院の事例を見てみましょう。
A動物病院では、アクセス解析により「皮膚科」のページが予想以上に見られていることを発見。皮膚科を前面に打ち出したところ、3ヶ月で皮膚疾患の新規患者が40%増加しました。このように、データに基づいた改善は確実な成果につながります。
2.Googleアナリティクスで最初に見るべき5つの指標

Googleアナリティクスには膨大なデータがありますが、動物病院が最初に注目すべき指標は5つだけです。これらを週1回チェックするだけでも、大きな改善につながります。
動物病院が見るべき5大指標
- ユーザー数(来訪者数) ホームページに何人が訪れたかを示す最も基本的な指標です。
 
| 規模 | 月間ユーザー数の目安 | 評価 | 
| 個人病院 | 500〜1,000人 | 標準 | 
| 中規模病院 | 1,000〜3,000人 | 良好 | 
| 大規模病院 | 3,000人以上 | 優秀 | 
- 直帰率 最初のページだけ見て離れた人の割合です。
 
動物病院の平均直帰率:55%
- 40%以下:とても良い
 - 40〜55%:標準的
 - 55〜70%:改善の余地あり
 - 70%以上:早急な改善が必要
 
- 平均セッション時間 1回の訪問でサイトに滞在した時間の平均です。
 
目安:2分30秒以上あれば良好
- 診療内容ページ:3分以上が理想
 - 料金ページ:1分以上
 - アクセスページ:30秒程度で十分
 
- ページビュー数 見られたページの総数です。1訪問あたり3ページ以上が理想的です。
 - コンバージョン率 目標達成率のことで、動物病院の場合は「電話タップ率」や「問い合わせフォーム送信率」を指します。
 
目標値:3〜5% (100人訪問して3〜5人が問い合わせをする)
3.飼い主さんの行動パターンから改善点を発見する方法
Googleアナリティクスの「行動フロー」を見ると、飼い主さんがどのような順番でページを見ているかが分かります。ここから、多くの改善ヒントが得られます。
典型的な行動パターンと改善ポイント
パターン1:すぐに電話したい飼い主さん
トップページ → アクセスページ → 離脱
(全体の約30%)
改善策:トップページに電話番号を大きく表示、クリックで発信できるボタンを設置
パターン2:じっくり検討する飼い主さん
トップページ → 診療内容 → 獣医師紹介 → 料金 → 離脱
(全体の約25%)
改善策:料金ページに「お問い合わせ」ボタンを追加、不安を解消するQ&Aを充実
パターン3:比較検討中の飼い主さん
Google検索 → 料金ページ → すぐ離脱
(全体の約20%)
改善策:料金ページに病院の特徴や強みを追加、他院との差別化ポイントを明記
実際のデータ分析例を見てみましょう。
| ページ遷移 | ユーザー数 | 離脱率 | 問題点と対策 | 
| トップ→診療内容 | 450人 | 35% | 良好、維持する | 
| トップ→料金 | 380人 | 65% | 料金だけ見て離脱→価値訴求不足 | 
| 診療内容→獣医師紹介 | 290人 | 25% | 信頼構築できている | 
| 料金→問い合わせ | 38人 | – | コンバージョン率10%は優秀 | 
4.ページ別分析で見つかる意外な問題点

各ページの詳細な分析により、予想外の問題点が見つかることがあります。特に注目すべきは「離脱率」と「平均滞在時間」の組み合わせです。
ページ別分析の見方
| ページタイプ | 滞在時間 | 離脱率 | 診断 | 対策 | 
| 長い滞在・高い離脱 | 3分以上 | 70%以上 | 興味はあるが行動に移せない | CTAボタンの追加 | 
| 短い滞在・高い離脱 | 30秒以下 | 70%以上 | 期待と違う内容 | タイトルと内容の一致 | 
| 長い滞在・低い離脱 | 3分以上 | 40%以下 | 理想的な状態 | 現状維持 | 
| 短い滞在・低い離脱 | 30秒以下 | 40%以下 | 通過ページ | 情報追加を検討 | 
実際に見つかった意外な問題点の例
B動物病院では、ブログ記事「猫の腎臓病について」が月間2,000アクセスもあるのに、そこから診療予約につながっていないことが判明しました。
分析の結果:
- 平均滞在時間:5分23秒(じっくり読まれている)
 - 離脱率:89%(ほぼ全員がそのまま離脱)
 - 次のページ:なし
 
対策実施: 記事の最後に「腎臓病の早期発見には定期健診が重要です。当院の健康診断はこちら」というリンクを追加
結果: 健康診断の予約が月5件増加(年間60件、売上300万円相当)
5.集客チャネル分析で効果的な宣伝方法を見極める

どこから飼い主さんがホームページに来ているかを分析することで、効果的な集客方法が分かります。
集客チャネル別の特徴と対策
| チャネル | 平均割合 | 特徴 | 強化方法 | 
| 自然検索 | 45% | 検索エンジンから | SEO対策、ブログ更新 | 
| 直接流入 | 25% | URLを直接入力 | 名刺・看板にURL記載 | 
| SNS | 15% | Facebook、Instagram | 定期的な投稿 | 
| リファラー | 10% | 他サイトからのリンク | 地域ポータルサイト登録 | 
| 有料広告 | 5% | Google広告など | キーワード最適化 | 
キーワード分析で分かる飼い主さんのニーズ
実際に検索されているキーワードを分析すると、飼い主さんの本当のニーズが見えてきます。
C動物病院の検索キーワードTOP10:
- 「C動物病院」(指名検索)- 25%
 - 「○○市 動物病院 夜間」- 12%
 - 「犬 皮膚病 ○○市」- 8%
 - 「動物病院 料金 安い」- 7%
 - 「猫 避妊手術 費用」- 6%
 
この分析から、夜間診療と皮膚科へのニーズが高いことが分かり、これらの情報を充実させることで、検索順位が向上しました。
6.目標設定と成果測定の実践的な方法
Googleアナリティクスの「目標設定」機能を使えば、具体的な成果を数値で追跡できます。動物病院で設定すべき目標を具体的に見ていきましょう。
動物病院の目標設定例
| 目標タイプ | 設定内容 | 目標値 | 測定方法 | 
| 電話タップ | 電話ボタンのクリック | 月50回 | イベント追跡 | 
| 問い合わせ | フォーム送信完了 | 月20件 | ページビュー | 
| 資料ダウンロード | PDFダウンロード | 月30回 | イベント追跡 | 
| 地図表示 | Googleマップのクリック | 月100回 | イベント追跡 | 
| 予約ページ到達 | 予約ページの表示 | 月80回 | ページビュー | 
マイクロコンバージョンの重要性
最終的な来院予約(マクロコンバージョン)だけでなく、その手前の小さな行動(マイクロコンバージョン)も測定することが重要です。
マイクロコンバージョンの例:
- 診療時間の確認(アクセスページ3秒以上滞在)
 - 料金の確認(料金ページを最後まで読む)
 - 獣医師の確認(スタッフ紹介ページを見る)
 - ブログ記事を読む(2分以上滞在)
 
これらを追跡することで、飼い主さんの関心度を段階的に把握できます。
7.月次レポートの作り方と改善サイクルの回し方

データは見るだけでは意味がありません。定期的にレポートを作成し、改善につなげることが重要です。
月次レポート テンプレート
【○○動物病院 月次アクセス解析レポート】
■ 期間:2024年○月1日〜31日
■ 全体サマリー
・総ユーザー数:1,234人(前月比+15%)
・ページビュー:4,567PV(前月比+8%)
・平均滞在時間:2分45秒(前月比+12秒)
・直帰率:48%(前月比−3%)
■ 目標達成状況
・電話タップ:65回(目標50回)◎達成
・問い合わせ:18件(目標20件)△未達
・予約到達:92回(目標80回)◎達成
■ 人気ページTOP5
- トップページ(1,234PV)
 - 料金表(890PV)
 - 診療内容(756PV)
 - アクセス(623PV)
 - 猫の病気ブログ(521PV)
 
■ 改善実施内容と結果
・先月の改善:トップページに緊急電話ボタン追加
・結果:電話タップ率が2.3%→3.8%に向上
■ 来月の改善計画
・料金ページの離脱率改善
・実施内容:Q&Aセクションの追加
・目標:離脱率65%→50%
PDCAサイクルの実践例
| 月 | Plan(計画) | Do(実施) | Check(評価) | Action(改善) | 
| 1月 | 直帰率を10%下げる | トップページ改修 | 55%→52% | 一定の効果あり | 
| 2月 | 問い合わせを倍増 | CTAボタン追加 | 10件→18件 | 位置を再検討 | 
| 3月 | ブログ流入を増やす | 週2回更新 | 150%増加 | 継続決定 | 
改善の優先順位の付け方
すべてを一度に改善することは不可能です。以下の基準で優先順位を決めましょう。
改善インパクト評価マトリクス
| インパクト/難易度 | 簡単 | 普通 | 難しい | 
| 大 | 最優先で実施 | 計画的に実施 | リソース確保後 | 
| 中 | 空き時間で実施 | 様子見 | 後回し | 
| 小 | やらない | やらない | やらない | 
実例:
- 電話番号を大きくする:インパクト大・簡単 → 今すぐ実施
 - ブログを毎日更新:インパクト中・難しい → 後回し
 - 予約システム導入:インパクト大・難しい → 計画的に実施
 
スタッフとの共有方法
アクセス解析の結果は、院長だけでなくスタッフとも共有することが重要です。
月例ミーティングでの共有例: 「今月のホームページ訪問者は1,200人でした。特に『猫の腎臓病』の記事が人気で、500人が読んでくれました。皆さんが診察で丁寧に説明していることが、ホームページでも評価されています。来月は犬の皮膚病について記事を書く予定です。」
このように、難しい数字ではなく、実感できる形で伝えることで、スタッフのモチベーション向上にもつながります。
まとめ
アクセス解析は、動物病院のホームページを「作りっぱなし」から「成果を生み出す資産」に変える強力なツールです。最初は難しく感じるかもしれませんが、見るべきポイントを絞れば、誰でも活用できます。
✅ 今すぐ始められる7つのアクション:
- Googleアナリティクスの導入(まだの場合) • 週1回、5つの基本指標をチェックする習慣づけ • 人気ページTOP5を確認し、さらに充実させる • 離脱率の高いページを1つ選んで改善 • 電話タップの計測設定 • 月1回のレポート作成(最初は簡単でOK) • スタッフとデータを共有する時間を作る
 
データが教えてくれる改善の方向性:
- ユーザー数が少ない → SEO対策、SNS活用
 - 直帰率が高い → トップページの改善、表示速度改善
 - 滞在時間が短い → コンテンツの充実、読みやすさ改善
 - コンバージョンが低い → CTAボタンの改善、不安解消
 
アクセス解析は「答え」を教えてくれるわけではありません。しかし、「何を改善すべきか」という明確な方向性を示してくれます。この方向性に従って一つずつ改善を積み重ねることで、確実に成果は現れます。
ホームページ制作会社として、私たちはGoogleアナリティクスの設定支援から、月次レポートの作成代行まで、様々なサポートを提供できます。しかし、最も重要なのは、院長先生が「数字の向こうにいる飼い主さん」を意識することです。
1人のユーザーは、1匹のペットとその家族。1回のページビューは、不安を抱えた飼い主さんの情報収集。そう考えると、アクセス解析の数字も温かみを持って見えてくるはずです。データに基づいた改善で、より多くのペットと飼い主さんの幸せに貢献していきましょう。
